【主張】核のごみ文献調査 知事は議論の芽を摘むな

 「芽を摘む」という言葉がある。これから大きく育とうとしているものごとを台無しにしてしまう意味を持つ表現だ。

 原子力発電で生じた高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向けた文献調査への応募を北海道寿都(すっつ)町の片岡春雄町長が検討している件で、鈴木直道北海道知事が繰り返している反対発言と行動は、まさしく健全な議論の芽を摘む行為に他ならない。

 国と原子力発電環境整備機構(NUMO)は、平成14年から全国の市町村を対象として文献調査受け入れの公募を続けてきた。

 核のごみの放射能は万年単位で持続する。地上の施設で人間が管理するより、ガラス固化体に加工して厚い鉄製容器などによる多重防護を施した上で、地下300メートルより深い岩盤中に埋設する方が合理的で、確実性も高いのだ。

 だが、処分地選定のプロセスの第1段階である文献調査に自治体の手が挙がりにくいのは、核のごみ処分場建設がNIMBY(ノット・イン・マイ・バックヤード)問題の典型例であるからだ。

 「必要だが、自分の地元にはお断り」という人間心理に根差すエゴイズムの超克のために、文献調査への応募検討を表明したのが片岡町長である。

 3日、直談判に寿都町へ乗り込んだ鈴木知事に対し、片岡町長は、この問題へ「一石を投じる必要性」を強調している。

 その通りである。いつまでも放置して、将来の世代に先送りしてはならない問題だ。寿都町の申し出によって始まろうとしている文献調査の2年間は、全国民が核のごみの後始末について真剣に考える絶好の機会であるといえる。

 鈴木知事は、片岡町長との会談の翌日、梶山弘志経済産業相とも面談し、今回の件に否定的な立場を伝えた。

 都道府県知事は、次の段階の概要調査に進む際に反対する権限が最終処分法で保証されている。意見はそのときに言えばよい。

 7日から片岡町長による住民説明会が始まった。現段階での鈴木知事の発言はルール破りで、冷静な議論を妨げ、風評被害醸成の素因ともなり得るものである。

 鈴木知事は文献調査を受け入れた自治体に最大で20億円が交付されることについて「札束で頬をはたくよう」と批判しているが、その発想は不健全である。

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