【主張】反体制派に毒物 プーチン政権の闇は深い

 ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏が重体となり、旧ソ連が開発した神経剤「ノビチョク」と同系統の毒物が使われたと特定された。

 ノビチョクは化学兵器級の毒物であり、民間で製造できるような代物でない。プーチン露政権が政敵排除を疑われるのは必然で、関与していないというならば、徹底的な捜査で疑念を払拭すべきだ。

 ナワリヌイ氏は8月20日、ロシアの旅客機内で倒れ、西シベリアの病院に緊急搬送された。親族らの強い要請でベルリンの病院へ移送され、ドイツで毒物に関する検査や分析が進められていた。

 メルケル独首相は2日、ノビチョク系の毒物が使われたとする軍研究所の分析結果を発表し、ロシアに説明責任を果たすよう要求した。欧米諸国も事態を重視し、強く真相解明を求めている。

 ナワリヌイ氏は反体制派の最有力政治家だ。メドベージェフ前首相の不正蓄財疑惑をインターネットで告発したのをはじめ、高官らの腐敗も次々と暴いてきた。

 ロシアでは13日に統一地方選が予定され、ナワリヌイ氏は活発な選挙運動を行うさなかに倒れた。シベリアでは地元当局の不正に関する調査も行っていたという。ナワリヌイ氏の封殺を狙った犯行だと考えるのが自然だ。

 プーチン政権はドイツの発表を「(反露の)情報キャンペーンだ」などと一蹴し、捜査を行わせる意思を示していない。不適切極まりない態度である。

 ロシアでは2006年に著名ジャーナリストのポリトコフスカヤさん、15年にはネムツォフ元第1副首相が射殺されたのをはじめ、プーチン政権を批判する多くの人々が殺害されたり、不審な死を遂げたりしてきた。

 これらの事件が解明され、首謀者が処罰されたことは皆無だ。たとえ政権が事件に直接関与していなくても、殺害が罰せられないという土壌をつくり、事件を誘発してきた責任は重い。

 06年には英国で、反体制派に転じた露情報機関の元将校が放射性物質のポロニウムで殺害された。18年には英国で亡命生活を送っていた露情報機関の元将校と娘がノビチョクで重体となった。

 英当局はいずれの事件でも露情報機関の関係者らを容疑者として特定したが、ロシアは無視した。プーチン体制の闇は深い。

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