【主張】ペットの飼育崩壊 多様な現状に福祉目線で

 ペットの犬や猫の数が大量に増えて適正な飼い方ができなくなる「多頭飼育崩壊」が多発し、社会問題になっている。

 不妊去勢をしないままでいる飼い主の無責任が理由だが、近年は経済的困窮や認知症、精神疾患といった多様な要因が複雑にからむことも分かってきた。

 環境省は検討会を設置し、自治体向けガイドライン策定を進めるが、動物愛護に福祉の目線からもアクセスし、官民一体での対策が求められる。

 今年3月、札幌市の一軒家から238匹もの猫が保護された事件があった。飼い主によると当初10匹程度だった飼い猫が大量に繁殖した。病気で働けずに収入が減り、不妊去勢手術ができなかったという。床には大量の骨が散らばるなどひどい状況だった。

 環境省の調査によると、平成30年度の多頭飼育に関する125自治体(都道府県、政令市、中核市)への苦情件数は2149件に上る。今年6月に施行された改正動物愛護法では、著しく適正を欠いた密度で飼育し、衰弱させた場合も虐待に当たると定め、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられることになった。

 これは劣悪な環境で動物を扱う繁殖業者だけでなく、多頭飼育崩壊も視野に入れたものだ。

 崩壊に至る要因は経済的理由が大きい。例えば29年時点で日本の家庭における生活保護受給世帯の比率は約1.7%だったが、多頭飼育の飼い主の場合、受給率は約20%に上ったというデータがある。犬や猫の避妊手術は数万円かかる上、「手術がかわいそう」といった心情的理由でためらう人も多い。犬猫の旺盛な繁殖力に対する正しい知識と理解が浸透していないのも原因の一つだ。

 さらに家族との死別による生活環境の変化や、独居高齢者の認知症、ペットに過剰な愛着を持つ精神疾患など、飼い主の多様な背景が問題を複雑化している。初期の段階で手当てをすれば防げるケースでも、それらの理由で地域社会から孤立する人も少なくない。現場の大半は家庭内で外から介入しにくいという事情もある。

 リスクをいち早く発見し適正な対応と指導を一体で行うにはさらなる法整備が必要だろう。行政、ボランティア団体、NPOなどが垣根なく情報共有し人も動物も住みよい国をめざしたい。

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