【主張】牛豚の大量盗難 早期検挙で全容の解明を

 群馬や栃木県など北関東を中心に牛や豚が大量に盗まれる事件が相次いで発生している。

 農家にとって飼育牛や豚は手塩にかけて育てた財産で、経済的ダメージは計り知れない。

 捜査当局は一刻も早く犯人を検挙し、動機や背後関係の解明に全力を挙げてほしい。

 群馬県警によると、県内では7月から8月にかけ、少なくとも7回にわたり、飼育されている豚約670頭が盗まれていた。被害にあったのは前橋市や太田市などの養豚場だ。主に子豚が狙われ被害総額は2千万円に上るとみて、県警が窃盗容疑で捜査している。

 JA前橋市によると、市内の養豚場5カ所で飼育豚約180頭が盗まれた。被害にあったのはいずれも「ユニット型」と呼ばれる簡易型の豚舎で、人がいない夜間に盗まれたとみられる。子牛6頭が盗まれた栃木県足利市では、深夜に逆さづりで牛を運ぶ男らの姿が防犯カメラに写っていた。

 不可解なのは、犯人らの動機である。牛は耳に個体を識別する耳標がついており、盗んだ牛を市場で販売するのはほぼ不可能だ。豚も生きた個体であれ、精肉したものであれ、日ごろの信頼関係で売買が成立するため、正規に市場等で売買するのは難しい。

 自分たちの食用だとしても被害頭数が多過ぎる。捜査当局には犯人検挙と闇の売買ルートの存在も含めた全容解明が急がれる。

 懸念されるのは、感染が落ち着きを取り戻した豚熱の再発だ。

 盗まれた大量の豚が不衛生な場所に運び込まれ、それがイノシシを介して豚熱に感染する可能性も捨てきれない。未感染地域に広がれば、なおさら被害は甚大だ。

 JA前橋市は、「農家の被害も深刻だが、豚熱の感染拡大が一番心配だ」という。養豚農家はただでさえ、感染拡大に神経を尖(とが)らせている。犯罪行為により感染が拡大する事態は許されない。

 折しも、日本は豚熱の感染拡大で、国際獣疫事務局(OIE)が認定する「清浄国」の資格を失い非清浄国となった。

 発生から2年が経過しても感染を収束できず、ワクチン投与も続いてOIEの規定を満たせなかったためだ。

 豚熱を制圧して清浄国に復帰するためにも、養豚農家が安心して経営に専念できる環境を整えることが肝要だ。

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