【主張】チェコ議長の訪台 民主主義の連帯を示した

 チェコのビストルチル上院議長が、中国の圧力をはねのけて外交関係のない台湾を訪問した。

 蔡英文総統との会談では、自由と民主主義を尊重する台湾を支持する考えを表明した。

 チェコは先の大戦後、ソ連に支配され、民衆は共産党独裁政権による圧制に苦しんだ。1968年の民主化運動「プラハの春」はソ連軍などに蹂躙(じゅうりん)された。89年にベルリンの壁が崩れ、共産政権を倒して民主化を勝ち取った。いわゆるビロード革命である。

 このような歴史を持つチェコで大統領に次ぐ地位の上院議長が台湾を訪問し、自由と民主主義の永続を説いた。その意義は小さくない。こうした動きを国際社会に広げていくことが重要だ。

 クベラ前上院議長が企業訪問団の団長として訪台を計画していたが、1月に急死して実現しなかった。駐チェコの中国大使は「訪台企業は当然の報いを受ける」と強い圧力をかけていた。中国の強硬姿勢にチェコの世論は反発し、上院は5月にビストルチル氏らの訪台を圧倒的多数で決めた。

 ビストルチル氏は立法院で演説し、台湾の民主主義を称(たた)えた。63年にケネディ米大統領が、共産主義の脅威に最前線で対峙(たいじ)していた西ベルリンを訪問し「私はベルリン市民」と語ったことにならって「私は台湾人」と述べた。

 台湾は、香港の自由と民主主義を奪った中国共産党政権の脅威に直面している。「私は台湾人」の訴えに内外で共感が広がったのは自然なことだろう。

 中国の王毅国務委員兼外相は外遊先のドイツで、ビストルチル氏の訪台を「中国政府と人民は絶対に座視することはなく、近視眼的な行為と政治的なばくちに高い代償を支払わせる」と罵(ののし)った。たしなみを欠き、あからさまに脅す言動は中国や北朝鮮に共通する共産党政権の特徴だ。

 仏独両政府は直ちに「脅迫は受け入れられない」と中国を批判し隣国スロバキアもチェコと連帯する姿勢を打ち出した。米国は8月にアザー厚生長官を台湾に派遣している。新型コロナ対策だけでなく台湾の自由と民主主義を擁護する姿勢を鮮明にするためだ。

 日本は自民党総裁選や野党新党の動きの最中とはいえ、政府や政党、国会議員の反応がほぼみられないのは残念だ。自由と民主主義を守る声をあげてほしい。

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