【主張】ポスト安倍の課題 拉致解決へ熱情継承せよ

 安倍晋三首相が辞意を表明した会見中、感情をあらわにするシーンがあった。北朝鮮による拉致被害者の家族に言及した際のことだ。

 「ご家族の皆さまにおいては、結果が出ていない中で、一人、一人と亡くなっていき、私にとっても痛恨の極みであります」。そう話す安倍首相は顔をゆがめ、目を潤ませた。

 安倍氏の辞意を受け、横田めぐみさんの母、早紀江さんは「本当に頑張ってこられた。悲しく、残念です」と述べた。有本恵子さんの父、明弘さんは「拉致解決へ思い描いていたことが、いっぺんに崩れ去った」と落胆した。

 無理もない。安倍氏は首相就任のずっと前から被害者家族に寄り添い、怒りや悲しみを共にしてきた。だから信頼された。家族の喪失感は大きいだろう。

 だが首相の交代を、被害者奪還に向けた戦いの中断に結び付けてはいけない。何より北朝鮮に、そう思わせてはならない。

 後継の首相には、安倍氏と同等かそれ以上の拉致問題に対する熱情が求められる。北朝鮮を動かすには、家族の怒りや悲しみをわがものと共有できるトップによる交渉以外に道はない。

 安倍首相は北朝鮮に対する経済制裁を徹底し、国際社会での圧力包囲網形成に尽力した。良好な関係にあるトランプ米大統領は拉致被害者家族との面会を繰り返し、金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談では、拉致問題の解決を直接迫った。

 その上で安倍氏は、金正恩氏との直接会談を目指していた。拉致問題は「圧力に重点を置いた対話と圧力の姿勢でしか解決しない」とした安倍氏の方針は正しい。この路線は継続すべきである。

 安倍氏は拉致問題の解決は「政権の最優先、最重要課題」と言い続けてきた。

 それが安倍政権特有のものであってはならない。変わらず政府の、または国民の「最優先、最重要課題」であるべきだ。

 安倍氏は「北朝鮮は拉致問題の解決なしに未来を描くことはできない。そう理解させなくてはならない」とも繰り返してきた。

 次の首相にも同様の強い言葉を北朝鮮に突き付けてほしい。それができない人物を党総裁、首相に選んではいけない。くみしやすしとみられれば、拉致の解決は遠のくばかりである。

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