【主張】茂木氏外遊再開 対中外交戦に勝てるのか

 茂木敏充外相が外遊を再開し、今月、東南アジア諸国連合(ASEAN)5カ国を含む7カ国を訪問した。海洋進出を強める中国をにらみ、航行の自由や法の支配の重要性を確認した。

 南シナ海問題で、ポンペオ米国務長官が7月中旬、声明で中国の権益主張を「違法」と批判し、日本や豪州が支持して国際世論を形成する機運が高まっている。これを逸することなく、軍事化に歯止めをかけねばならない。

 肝心なのは、経済的に中国に大きく依存するASEAN加盟国が同調するかどうかだ。

 茂木氏が、ASEANの親中の筆頭であるカンボジアを含め、加盟国を早々に訪問したのは適切だった。ただし、原則論を確認しただけでは十分とはいえない。

 中国の主張を退けた2016年の仲裁裁判所の裁定への対応を問題視するなど、中国に厳しいメッセージを発する必要があった。

 ルールなど関係なく、自らにつくなら利益提供を惜しまず、そうでなければ徹底して圧力で臨む。そんな相手と綱引きをしているのだと認識せねばならない。

 ポンペオ氏の声明後、中国はただちに、仲裁裁判の当事国でもあるフィリピンにテレビ電話形式での外相会談を求め、「争いのある海洋問題がすべてではない」と友好関係を強調してみせた。

 ドゥテルテ比大統領は、「私は反米でも反中でもない」と述べるなど、米中双方から距離を置くことで、中国から経済協力を引き出そうという姿勢である。

 中国は今月、外交トップの楊潔●(よう・けつち)共産党政治局員がシンガポールと韓国を歴訪した。王毅国務委員兼外相がベトナム、インドネシア外相を迎えるなど、コロナ禍の中でも、周辺国への活発な外交攻勢で、巻き返しを図っている。

 人権状況を理由に欧州連合(EU)が経済制裁を発動したカンボジアには、自由貿易協定(FTA)合意で手を差し伸べるなど、親中の国とのさらなる関係強化も欠かさない。

 今月初めに予定されたASEAN関連外相会合は延期となった。南シナ海をめぐる国際世論の形成で当面、対面式の国際会議開催の可否は不透明だ。

 普段にも増して、外相などの個別訪問による外交が重要である。地道に積み重ね、成果を示してもらいたい。

●=簾の广を厂に、兼を虎に

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