【主張】脅威を増す夏 「適応策」第一に転換図れ

 記録的な高温が日本列島を包む今夏、熱中症患者が多発し、命を失う人が後を絶たない。

 温暖化への対策として国が10年以上にわたって主導してきた「緩和策」ファーストの取り組みが裏目に出ているのではないかと気がかりだ。

 温暖化対策には二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を減らす緩和策と、高温や豪雨といった気象災害や生態系への悪影響を軽減するための「適応策」の2つがある。

 後者の適応策への取り組みの遅れと手薄感が否めないのだ。

 日本は京都議定書に基づき2008年以来、CO2の排出削減(緩和策)に官民挙げて身を削る努力を続けてきた。

 にもかかわらず、日本をはじめ世界各国での猛暑発生は止まらない。国内では、夏の高温が「キラーヒート」と呼べるほどに猛威を増している。その結果、熱中症での救急搬送が増加中だ。3年前は約5万3千人だったが、一昨年は約9万5千人に急増し、昨年も約7万1千人を数えている。

 夏の高温化が熱中症の原因だ。多くの人が暮らす都市域では大量の排熱が発生し、風の流れを妨げるビルが林立する。蒸散作用で気温を下げる庭木の類はマンション建設などで減っている。

 東京などの大都市圏では100年当たりの気温上昇が国内平均の2倍なのだ。夏は夜間も冷房なしに過ごせないわけである。

 一時期、盛んに推奨された屋上緑化の声もあまり聞かれない。地方では耕作放棄による水田面積の減少が気温上昇に関係していることも考えられる。

 海陸風や山谷風を使って夏の市街地の気候を改善する「風の道」の整備、普及を急ぎたい。

 緩和策は国際的な注目度が高い。だが、日本の場合は努力が効果に直結しないことを承知しておくべきである。

 新たなパリ協定で日本は2030年までに26%のCO2排出削減を公約しているが、世界全体では約1%の削減効果にしかならない。中国などが大量に排出するので、焼け石に水なのだ。

 これまで緩和策偏重の陰に置かれてきた適応策には、豪雨の増加による水害の防止対策も含まれる。気候変動への現実的な備えには適応策の強化が必要だ。この転換こそが国民の命と財産を守る最も確実な道である。

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