【主張】重油流出事故 生態系保全に積極支援を

 インド洋の島国であるモーリシャスの沖合で商船三井がチャーターした大型貨物船が座礁し、燃料の重油が大量に流出する事故が発生した。

 沿岸部には重油が流れつき、マングローブ林やサンゴ礁の被害も報告されている。同国政府は環境非常事態を宣言しており、重油の回収作業を急ぎ、海洋汚染の拡大防止に全力を挙げねばならない。

 事故の当事者だけではなく、日本政府も万全の態勢で対応にあたる必要がある。すでに派遣した緊急援助隊に加え、国土交通省や外務省、環境省など関係省庁が一体で生態系の保全を含めた総合的な対策を講じてもらいたい。

 人口約130万人のモーリシャスは、美しい海や山などで知られる世界有数の観光地だ。

 その沖合で座礁し、重油1千トン以上を流出させた貨物船は、日本の長鋪(ながしき)汽船(岡山県)が船主として所有し、商船三井が借り上げて運航していた。

 すでにフランスが重油除去チームを派遣し、日本も海上保安庁の担当者を含む援助隊を送った。

 新型コロナウイルスの感染拡大で海外への人員派遣は難しくなっているが、今後も必要に応じて専門家や資材などの追加支援を進めるべきだ。

 海上の重油はほぼ回収したというが、沿岸に流れ着いた重油はマングローブ林やサンゴ礁を含む現地の生態系を破壊することが懸念される。生物多様性を守る観点からも十分な対策が必要だ。

 観光立国のモーリシャスはコロナ禍で深刻な打撃を受けている。現地の観光産業に対する支援も検討すべきである。

 同国政府は「経済、社会、環境面に影響が出ている」として船主などに損害の法的責任を追及すると表明した。国際条約では油の海洋流出事故の責任は船主の長鋪汽船にあり、保険の賠償額上限は船舶の総トン数で決められている。商船三井も当事者として真摯(しんし)に対応してほしい。

 原油の漂着から環境が回復するまでには長い時間を要する。長期的な支援に向けて官民による枠組みも検討する必要がある。

 現地当局は安全航行を怠った疑いでインド人船長らを逮捕した。貨物船は携帯電話の電波を受信するために陸地に近づいたとの報道もある。事故原因の究明も再発防止に欠かせない。

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