【主張】核のごみ処分場 静かに民意を見守りたい

 原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を封入したガラス固化体を地下深くに埋設する最終処分場選定に向けた文献調査への応募を、北海道寿都(すっつ)町が検討中だ。

 国が平成29年に最終処分の適地を示した「科学的特性マップ」を公表して以来、初めての応募につながる可能性を持つ自治体の動きである。

 同町では今月下旬に町民との意見交換会を開いた上で、9月中旬にも応募するかどうかを決めることにしているという。

 国のエネルギー政策に深く関わる課題であると同時に寿都町の人々の暮らしや地域社会にも変化をもたらす案件である。町民による議論を静かに見守りたい。

 13年前の高知県東洋町の場合には反対派が押し寄せるなどして調査の受け入れ断念に至った例がある。こうした外圧による自治体の意思決定への干渉は、あってはならないことである。

 高レベル放射性廃棄物は、万年単位にわたって放射線を出し続ける。地上施設で人間が管理するよりも、地下300メートル以深の安定した岩盤中に埋めて隔離する方が、確実性かつ合理性で勝るのだ。

 最終処分場の選定は、原子力発電環境整備機構(NUMO)によって、約20年を要する3段階の調査で進められる。

 2年程度と見込まれる文献調査はその第1段階で、既存の地質調査資料や歴史文献などが対象だ。受け入れた自治体には最大20億円の交付金が支払われる。

 高レベル放射性廃棄物は既に発生している。それゆえ最終処分場建設は将来世代に先送りすることなく、現在の世代で解決すべき問題なのだ。寿都町の検討開始を、国民全員で核のごみの最終処分について考える機会にしたい。

 理想的には、他の自治体からも文献調査受け入れの手が挙がることが望ましい。複数の地点で調査が進めば、一段とこの問題への議論が深まると同時に、より最終処分に適した地点が見つかる可能性が高くなる。

 フィンランドでは処分場の建設が始まり、スウェーデンでも建設地が決まっている。文献調査着手からガラス固化体の地下埋設完了までに100年以上を要するのが最終処分事業である。

 日本もその第一歩を踏み出さねばならない時期である。

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