【主張】香港立法会選延期 民意封印する強権発動だ

 香港政府は、9月6日に予定されていた立法会(議会)選の1年延期を決めた。

 新型コロナウイルス感染拡大を理由にしているが、狙いは民主派を弱体化させ、根絶やしにすることだ。

 高度な自治を保障した「一国二制度」を葬る香港国家安全維持法(国安法)に多くの香港人が反対している。その民意を封印する強権発動だ。民主主義の一大危機として、決して看過できない。

 訪英した茂木敏充外相はラーブ外相との会談で、立法会選をめぐる情勢について重大な懸念を共有した。日本は欧米と結束して延期無効を訴え続けるべきだ。

 6月末に国安法が施行され、言論や集会の自由が抑圧される中でも、民主派は立法会選で過半数の議席を獲得することを目指してきた。7月中旬に民主派が実施した予備選には約61万人が投票した。この抵抗に中国も香港政府も危機感を強めたのだろう。

 条例では立法会選延期は最長2週間しか認められないが、コロナ禍を「緊急事態」とする超法規的措置で1年にした。同時に民主派12人の立候補も禁止した。習近平指導部への忠誠を踏み絵に、民主派を徹底排除し、立法会を親中派で独占させたい思惑は明白だ。

 当局は、国安法による民主派取り締まりも急いでおり、国家分裂や政権転覆などを禁止する同法違反容疑による逮捕者が相次いでいる。英国に逃れた羅冠聡氏ら海外在住6人を同法違反容疑で指名手配もした。羅氏は7月に米公聴会にオンラインで出席し、ロンドンではポンペオ米国務長官と面会した民主活動家だ。手配された中には米国籍の活動家もいる。

 自由の尊さを叫び、中国の非道について、世界各地で訴える人々を「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えた」とみなし、一網打尽にする魂胆だ。英国やカナダ、豪州などが香港との犯罪人引渡条約を停止したのは当然だ。

 政治弾圧が激しさを増す今、民主派の頼みの綱は、国際社会による圧力である。違法集会を扇動した罪などに問われた民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏は5日の公判後、報道陣に流暢(りゅうちょう)な日本語で、「香港人の民主主義を守るためにこれからも頑張っていく」と支援を呼びかけた。

 周氏らの息の長い戦いに、われわれも寄り添い続けたい。

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