【主張】和牛遺伝子 駆け込み不正転売防止を

 宮崎県産のブランド和牛の精液が不正に県外に流出していた。

 懸念されていた事態の発覚である。海外に流出して質の良い牛肉が生産されれば、被害は県内にとどまらない。日本全国の家畜農家にとっても、大きな打撃となる。

 今秋、和牛遺伝子の保護と不正流出の防止を目的とした改正法と罰則を伴う新法が施行される。駆け込み的な不正転売を許さないためにも、官民を挙げた監視強化が欠かせない。

 県によると、平成28年から30年、授精師の1人が、精液の入った容器約120本を精液証明書を付けずに県内の別の授精師に譲渡した。中には、県を代表する種雄牛「耕富士」や「満天白清」が含まれ、北海道や埼玉、愛知など7道県に流出した。精液は県の譲渡要領で県内でしか使えない。

 現行の家畜改良増殖法では、精液を譲渡する場合、精液証明書の添付が義務付けられている。県は不正に関与した授精師4人を同法に基づき3カ月~1年の業務停止処分とした。流出先の畜産関係者の通報で発覚した。

 譲渡側にとって、不正取引で得る報酬は通常取引の10倍以上に上る。受領する側もブランド和牛の精液を使って交配し、質の良い和牛を手っ取り早く生産できるメリットがある。海外に転売する場合はさらに高額になるとみられ、これが不正の温床になっている。

 今回は現行法による行政処分となったが、今秋には新法の家畜遺伝資源不正競争防止法と改正家畜改良増殖法が施行される。

 不正競争防止法では、契約違反の輸出を生産者側が裁判所に差し止め請求できる。詐欺や窃盗などで遺伝資源を取得した場合、個人は最高で10年の懲役、1千万円の罰金を科す。法人は最高で3億円の罰金だ。改正家増法は譲渡の記録を関係者に義務付けるなど流通ルールを厳格化した。

 ただ、罰則強化は不正防止の抑止にはなっても、根絶できる保証とはならない。それを上回る報酬を提示された場合、精液などを不正に横流しする者が出てこないとは言い切れないからだ。

 和牛は長きにわたって税金などを投じ品種改良を積み重ねてきた国民の財産だ。施行までの間、現行法による流通管理の徹底はもちろん、施行後も、2法の効果的な運用による不正防止と流通管理の強化が求められる。

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