【主張】ロシアの改憲 北方四島の返還遠のいた

 ロシアが事実上の終身独裁体制へと歩み出した。憲法改正の是非を問う国民投票で、投票者の過半数が賛成し改憲が成立した。これにより、プーチン大統領が2036年まで統治することに道が開かれた。

 プーチン氏が自由や民主、法の支配といった普遍的な価値観を顧みないことが改めて明白になったといえる。極めて憂慮すべき事態だ。

 日本にとっては、北方四島の返還がさらに遠のいたことを意味しよう。安倍晋三政権はこの現実を直視し、対露外交の戦略を抜本的に見直さなくてはならない。

 プーチン政権は改憲案の中に保守層受けしそうな内容を盛り込んだ。その典型が領土に関わる一連の条項である。

 例えば「領土の割譲とそれに向けた行動や呼びかけ」を禁じた。「隣国との国境画定作業を除く」という留保条件があるとはいえ、国民の愛国心を喚起しようとする狙いは看過できない。

 「祖国防衛の偉業をおとしめること」を禁じ、「歴史の真実を守る」と盛り込まれた。ロシアは「第二次大戦の結果」として北方領土の不法占拠を正当化してきた。この身勝手な歴史認識を憲法で固定化させようとしている。

 プーチン氏は6月の演説で、北方領土を「祖国」と表現するなど日本との交渉を進める意思がないことは明らかだ。安倍首相は北方領土での共同経済活動といった不毛な提案を撤回すべきである。

 プーチン政権がまともな交渉相手となり得ないのは、その強権的な政治手法に拍車がかかっているからだ。プーチン氏は1月、唐突に改憲案を出した。当初は大統領任期が切れる24年以降に院政を敷く布石とみられたが、3月、不意打ちのように5選出馬を可能にする条文が加えられた。

 プーチン氏はこれまでも議会や司法といった民主主義の根幹を骨抜きにし、政敵排除で自らに権力を集中させてきた。大統領を退任すれば報復を受けると考え、居座りを決め込んだのではないか。

 中国でも18年に国家主席の任期制限を撤廃する改憲があった。その中国が香港の「一国二制度」を形骸化させた直後のロシアの改憲だ。日本と隣り合う中露という2大国で独裁が強まり、長期化しようとしている。民主主義の価値観を共有する日米欧は連携をさらに強めなければならない。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ