【主張】露の「自国領」発言 四島返還要求へ立ち戻れ

 ロシアのプーチン大統領が12日の演説で、北方領土やウクライナ南部クリミア半島を「祖国」と表現し、自国領であるとの認識を示した。

 ロシアでは7月1日にプーチン氏の5選出馬を可能にする憲法改正の国民投票が予定される。国民の愛国心を高揚させ、賛成投票に駆り立てる思惑での発言だった。

 プーチン氏に北方領土交渉を進める意思がないことは、もはや明白である。安倍晋三首相は、北方領土での共同経済活動といった不毛な提案を撤回し、対露姿勢を根本的に改めねばならない。

 問題の発言は、モスクワの戦勝公園で行われた祝日「ロシアの日」の式典でなされた。プーチン氏は、西部の飛び地カリーニングラードから東の北方領土まで、北極海から南のクリミア半島までが「祖国」「家」だと述べ、歴史に誇りを持つよう訴えた。

 北方領土とクリミア半島をわざわざ明示するのだから、盗人猛々(たけだけ)しいにも程がある。

 独裁者スターリンが支配した旧ソ連は第二次大戦末期の1945年8月9日、日ソ中立条約を破って対日参戦し、火事場泥棒のように北方四島を乗っ取った。プーチン政権は「大戦の結果だ」とうそぶき、不法占拠を続けている。

 クリミア半島は2014年、ウクライナでの親露派政権崩壊に憤ったロシアが強奪した。「力による現状変更」という点で北方領土問題と同根であり、とうてい容認できない行動である。

 安倍首相は16年、対露経済協力を領土問題解決につなげる「新しいアプローチ」を打ち出した。18年には色丹島と歯舞群島の2島に絞って交渉を行う事実上の方針転換も行った。ロシアに足元を見られる結果となった。

 7月1日に投票されるロシアの改憲は、プーチン氏の終身大統領に道を開くことを主眼とする。改憲案には「領土の割譲禁止」といった内容も含まれ、保守層にアピールして成立させる思惑だ。

 しかし、長引く経済低迷に新型コロナウイルス禍が重なり、プーチン氏の求心力は低下しているのが現実である。改憲が仮に投票者の過半数の支持を得て発効しても、プーチン体制の長期化に反発する世論は強まっていく。

 日本は「コロナ後」のロシア情勢を注視し、北方四島返還を断固実現する戦略を描くべきだ。

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