【主張】抗体検査 感染実態の把握に努めよ

 目に見えないウイルスとの戦いでは、検査による「見える化」は最も基本的で有効な手段だ。

 感染者に症状が表れるとは限らない新型コロナウイルスの場合は特に感染の実態を正確につかむことが重要である。

 そのために、政府は東京、大阪などの流行地と感染が少ない地域で1万人規模の抗体検査を実施する。

 検査機能の向上を図り、取り組みを加速すべきである。それは新型コロナをより深く知り、ワクチンや治療薬の開発、社会の対応に生かすことにもつながる。

 抗体検査は、少量の血液を採取し、特定のタンパク質から新型ウイルスに感染した経験の有無を調べる検査だ。検査時点での感染の有無を診断するPCR検査や抗原検査とは異なる。

 新型コロナの場合、罹患(りかん)しても無症状の人や、風邪程度の症状で感染に気づかぬまま日常生活を営む人もいる。症状ではとらえきれない感染の広がりをつかむのが狙いである。

 抗体検査は、世界各地で行われている。米・ニューヨーク州では3千人に実施し、約14%が陽性だった。人口比から考えると、感染者はこれまで認識されていた人数の10倍にも上る。

 スペインでは約6万人が参加し、速報によると約5%が陽性だった。国や地域ごとに異なる抗体保有率は、感染の広がりを示す指標になる。

 抗体検査が注目されるのは、社会、経済活動を再開する「出口戦略」の指標に使えるとの期待があるからだ。住民の6割以上が免疫を持てば「集団免疫」ができて爆発的な流行は起きないとされる。そうなれば、厳しい外出自粛をせずに済む可能性がある。

 ただ、現時点では抗体検査での「陽性」を「免疫証明」に使うのは時期尚早である。科学的に未解明な点が多いからだ。抗体がどのくらいあれば免疫として機能するのか、その免疫がどのくらい持続するのか、早期に解明されることを期待したい。

 厚生労働省が4月に東京都内で先行実施した抗体検査では、陽性率は最大で0・6%だったが、新型コロナ発生前の検体でも陽性率は最大0・4%に上った。検査精度を高める必要がある。民間企業を後押しし、検査の質と量を高めることが、ワクチンや治療薬の開発にも資するはずだ。

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