【主張】抗原検査 現場判断を尊重し活用を

 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを短時間で簡易診断できる「抗原検査」の検査キットが薬事承認された。

 ウイルスの遺伝子配列を検出するPCR検査では判定に数時間を要し、結果の告知が翌日以降になる場合が多い。ウイルスのタンパク質を検出する抗原検査は、15~30分で結果が出るので、検査の効率化、拡充が期待されるという。

 ただし、抗原検査はPCRに比べて精度が低く、「陽性」の判定はそのまま確定できるが、「陰性」の場合はPCRによる再検査が必要となる。

 それぞれの検査の特性を踏まえて効果的な組み合わせ、使い方を確立したい。最も重要なのは、医療機関の実情に沿って現場の判断を尊重することである。

 抗原検査の簡便性、迅速性への期待から、拙速に利用拡大を図ると、かえって医療現場の負担が増すことにもなりかねない。

 たとえば、東京都が公表した最新の「陽性率」は5・6%で、他の道府県はこれより低いと推定される。

 仮に陽性率5%で20人が抗原検査を受けた場合を考えると、1人の陽性が確定し、19人はPCRの再検査を受けることになる。つまり、95%の確率で検査が「二度手間」になってしまうのだ。

 抗原検査は判定は簡便だが検体の採取はPCRと同様の感染防護が必要だ。検査の効率化や拡充を急ぐあまり、医療機関の負担と感染リスクが増大するような事態は絶対に避けなければならない。

 一方で、症状が重く感染が強く疑われる患者に対して、少しでも早く「陽性」を確定させ適切な治療を行う必要がある場合には、抗原検査は有効だろう。また、医療機関や介護施設などで感染者が出た場合には、抗原検査により感染拡大の状況を素早く把握することが、クラスター化を阻止するために役立つはずだ。

 新型コロナウイルスは科学的に未解明な部分が多いので、精度の低い検査の効果は限定的だ。医療現場が抗原検査を効果的に活用するためにも、精度が高いPCR検査の拡充が必要となる。

 受診者も、早く結果を知りたいからとむやみに抗原検査を希望することは戒め、医師の判断を尊重する意識を持ちたい。また、感染歴を調べる抗体検査とは違うことも認識しておくべきだ。

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