【主張】自粛警察 感染収束の大きな障害だ

 なんとも嫌な言葉だ。「自粛警察」という響きと行為には、寒々しさを覚える。

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が延長される中、感染者の個人情報がネット上にさらされ、罵詈(ばり)雑言が飛び交う。自治体の要請を守りながら時短営業を続ける店舗を「つぶれろ」などの心ない貼り紙が襲う。

 これらの行為は「自粛警察」「自粛ポリス」、あるいは「自粛自警団」などと呼ばれている。

 対象は、医療機関に及ぶこともある。営業を続ける大型店舗の駐車場では他の都道府県ナンバーの車両が傷つけられたり、幅寄せされる行為も報告された。

 ウイルスの感染拡大防止に向けて全国的な自粛が続く中、眉をひそめたくなる光景に出くわすことがあるのも現実である。ただしこれらの行為に陰湿な中傷や威嚇で対するのは私的制裁にあたる。

 憲法第31条は「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若(も)しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」と定めている。私的制裁や私刑は憲法違反である。

 店舗に休業を求める貼り紙などは、その文言によって強要、威力業務妨害、偽計業務妨害などの罪にあたる可能性がある。車両の傷つけは器物損壊罪、幅寄せは道路交通法違反などに該当する。

 法に反するからというだけでやめようと訴えるわけではない。

 誤った正義感の発露や、自粛のストレスの発散として他者を傷つけるのは、あまりに寂しい行為ではないか。時流に便乗した愉快犯なら言語道断である。

 ウイルスは手ごわい。心のすきや社会の分断は感染拡大を目指す彼らの好物であると認識したい。それは個人間でも、自治体間、国家間でも同様である。

 「自粛警察」の蔓延(まんえん)は、感染収束の大きな障害となる。自らが対象となることを過度に恐れれば、体調を害しても検査を受けることをためらうようになる。

 その結果、ウイルスに感染していても無理して日常生活を続け、自らの生命を危うくし、他者への感染を拡大させてしまう。一人のみならず同じ恐怖が多くの人の判断を誤らせれば、自粛の努力で収束傾向にあるウイルスは瞬く間に元気を取り戻すだろう。

 「自粛警察」は、ウイルスとの戦いの大敵となる。

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