【主張】農産物の輸出規制 結束強め安定供給求めよ

 新型コロナウイルス感染のパンデミック(世界的大流行)を乗り越える上で、食料の国際的な安定供給の維持は極めて重要である。世界の貿易が滞る中でも、各国の食料安全保障が揺らぐことはあってはならない。

 その点で気がかりなのが、ロシアなど十数カ国が農産物や食品の輸出規制に動いていることだ。輸出国による行き過ぎた囲い込みが相次げば世界的な食料危機を招きかねない。警戒すべきことである。

 先に20カ国・地域(G20)の農業大臣は臨時テレビ会議で、世界の食料安全保障を守るため緊密に連携し、具体的行動を取ることを明記した声明を採択した。

 国際社会は監視の目を強め、不当な貿易制限を確実に排除しなければならない。日本はその先頭に立ち、輸出国側に安定供給を強く働きかけていくべきである。

 感染拡大を受けて、小麦の輸出大国であるロシアが穀物の輸出枠を設定した。ウクライナも小麦やソバの実の輸出制限・禁止に動き、カンボジアやトルコ、エジプトなども輸出規制を講じた。

 世界貿易機関(WTO)は、穀物などの食料品が危機的に不足する場合に一時的な輸出制限を行うことを認めている。各国の規制がこれに適合するかどうかを科学的なデータに基づいて検証し、不当な措置を退ける必要がある。

 今のところ日本の食卓にはほとんど影響していない。例えば日本の小麦輸入は、米国やカナダなどが多くを占め、ロシアなどのシェアはわずかだからだ。国内備蓄もある。これらはもちろん、冷静にみておくべきことである。

 ただし、輸出国に貿易制限措置が広がると、国際市況が高騰する懸念も高まる。そうなれば食料自給率が4割に満たない日本には厳しい。これを避ける国際協調に万全を期すべきはもちろん、国内の生産基盤を強化して自給率を高める取り組みも確実に進めたい。

 先進国以上に深刻なのが途上国だ。世界食糧計画(WFP)は今回の感染拡大で、世界で飢餓に直面する人が昨年よりも倍増し、2億6500万人になる可能性があると警告した。折しもアフリカなどでバッタが大量発生し作物を食い荒らす被害が広がっている。これらが相まって食料危機に発展すれば、感染収束後も世界経済は泥沼から抜けられまい。その危機感を共有しておくことが肝要だ。

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