【主張】朝乃山が新大関 横綱へ駆け上がる気概を

 器の大きさを感じさせる力士である。

 26歳の朝乃山が大関に昇進した。

 188センチ、177キロの立派な体は、地元富山県の立山連峰にちなみ「人間山脈」と評される。

 右差し、左上手という盤石の形もある。春場所で通算44度目の優勝を果たした横綱白鵬が「私の後継者となって、相撲界を引っ張っていってくれる存在なのかもしれない」と賛美したほどだ。

 右四つからのスケールの大きな相撲を見れば、周囲から「早く綱取りを」との声が上がるのもうなずける。伝達式の口上では「大関の名に恥じぬよう相撲を愛し、力士として正義を全うし、一生懸命努力します」と述べた。

 「愛」と「正義」は、母校富山商高の校訓にある言葉だという。挿話にも篤実な人柄がにじむ好漢だが、将来の角界を背負う大器と見込んで、あえて厳しい指摘をしておきたい。

 春場所を含む直近3場所で計32勝を挙げたものの、対横綱戦は1勝3敗だった。その1勝も鶴竜の休場による不戦勝だ。白鵬との対戦ではまだ白星がない。

 白鵬は35歳、鶴竜は34歳と体力面の衰えを隠せず、大関陣もこの半年で3人が陥落した。上位の高齢化が進む中で、大関昇進の目安となる3場所計33勝に届かないようでは、その先にある横綱の座は見えてこない。

 安定した相撲内容や将来性が評価された今回の昇進は、他の若手が伸び悩んでいるという窮状の裏返しでもある。

 大関になれば、日々の土俵が厳しい批評にさらされる。朝乃山には、より強まる向かい風をはねのけ、一気に最高位へと駆け上がる気概を示してほしい。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、春場所は史上初の無観客開催となった。歓声も喝采もない中で、力士にとっては力を出しづらい環境だったはずだ。

 しかし、白鵬と鶴竜が7年ぶりとなる横綱同士の相星決戦を演じるなど、千秋楽まで目の離せない土俵が続いた。テレビ桟敷で見守った全国の好角家も、存分に楽しめたのではないか。

 幕内力士が高熱で途中休場するなど、予断を許さなかった。本場所を全うできたのは、関係者一人一人が感染防止に努めた結果であり、国技の面目躍如だろう。この点は、高く評価したい。

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