【主張】川内原発停止 理にかなった処分なのか

 九州電力の川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が16日に運転を停止した。

 福島事故を踏まえた新規制基準で設置が義務づけられたテロ対策施設の完成が期限に間に合わなかったためである。

 この停止によって、国内で発電中の原発は6基になった。5月には川内2号機が、8月と10月には関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県)が同じ理由で順次停止に追い込まれる。

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済がエネルギー分野を含めて変調を来す中、原発の強制停止による安定電源の縮小は、憂慮すべき事態だ。

 テロ対策施設の正式名称は「特定重大事故等対処施設」である。テロリストが航空機を突入させた場合でも、遠隔操作によって原発からの放射能放出を防止できるようにする施設で、第2中央制御室に相当する。

 テロ対策施設は大規模にならざるを得ず、電力会社は建設のために敷地内の山を削ったり、トンネルを掘ったりという難工事に取り組むことになったのだ。

 工事が間に合わなかったことに対して原子力規制委員会は、九電など電力会社の工事に対する見通しの甘さがあったと批判したが、あまりにも一方的だろう。

 テロ対策施設は原発本体の「工事計画」の認可から5年以内に完成させなければならないことになっていて、川内1号機の認可は平成27年3月だった。

 しかし、テロ対策施設の建設には、新たにその認可を得なければ着手できない。規制委がこれを認可したのは30年5月以降だ。工事が許されないまま約3年も過ぎているので、九電に与えられた建設期間は正味2年足らずだった。

 これでは間に合わないのが当然だろう。5年間の工事期間の起点の設定が問題なのだ。

 また、テロ対策施設の完成が期限に遅れるとその翌日から、にわかに攻撃の危険性が増すのだろうか。そうではあるまい。

 不合理な工期の設定と運転停止の強権発動は、電力会社の経営悪化を招くだけでなく、国の長期エネルギー政策を揺るがし、温暖化防止を目指すパリ協定での日本の公約達成にも水をさす。

 規制委も国の行政組織である。エネルギー安全保障重視への真摯(しんし)な意識改革を求めたい。

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