【主張】春闘回答 賃上げの必要性は不変だ

 春闘交渉を牽引(けんいん)する自動車や電機など大手メーカーの経営側による一斉回答で、基本給を底上げするベースアップ(ベア)が低水準にとどまった。家計を後押しするにはいかにも力不足だ。

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界経済が後退する懸念が急速に高まる中で、経営側は最後まで賃上げに慎重な姿勢を崩さなかった。ベアの引き上げを中心とする、ここ数年の賃上げ機運は水を差された格好である。

 世界情勢は大きく揺れ動いており、当面は賃上げよりも経営悪化に備え、雇用確保を優先したいという判断なのだろう。ただ、人材投資を含む継続的な賃上げの必要性は不変である。各社が経営状況に応じて積極的な賃上げに取り組むことが欠かせない。

 新型コロナウイルスが影を落とす交渉となった。政府が大型イベントの自粛を要請し、労組の集会が相次いで中止となった。組織力をアピールできず、労使協議は平行線が目立った。

 トヨタ自動車が7年ぶりにベアを見送り、業績が悪化する鉄鋼各社もベアゼロで決着した。ベアを出す企業でも昨年実績を下回るところが多く、連合の初回集計でベアと定期昇給を合わせた賃上げ率は1・91%と2%を割り込んだ。基本給を上げるベアを増やせば、固定費が高止まりするという経営側の論理を打ち崩せなかった。

 しかし、賃金が伸び悩めば、ただでさえ停滞感の強い景気を、さらに弱めかねない。経営環境の激変に備えることも大事だが、守りの姿勢ばかりでは企業の成長は期待できない。賃上げや設備投資などを通じて、事業基盤の強化に取り組むべきである。

 業界横並びの交渉も限界を迎えている。産業別労組が一致して経営側に賃上げを要求してきたが、企業の業績格差が広がり、事業構造も各社で異なる。横並び交渉では本来、獲得できるはずの賃上げも得られなくなる恐れがある。

 今春闘では経団連が年功序列を排し、成果を出した人への配分を重視する姿勢を打ち出した。硬直的な人事制度を改革しなければ優秀な人材の獲得も難しい。労組側が成果を重視した処遇に一定の理解を示したのは前進といえる。

 継続的な賃上げは、収益の確保が前提となる。そのためには労使で生産性向上などに取り組むことも重要である。

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