【主張】パンデミック 国際協調で鎮静化目指せ WHOは対中配慮を猛省せよ

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の現状について「パンデミック(世界的大流行)といえる」と表明した。

 世界全体で、感染者数は約12万人、死者は4千人以上に上っている。人類が異常事態に直面したことは明らかだ。

 WHOの規定上は、パンデミックの公式な宣言はインフルエンザに対してのみ使用される。そこでパンデミックと形容することで事態の深刻さを訴えた。

 今、最も必要なことは国際社会が協調して、中国・武漢発の新型コロナウイルスの脅威に立ち向かうことだ。

 ≪習氏は全情報の開示を≫

 それにはまず、習近平政権が世界に対して全ての情報を開示する必要がある。これまでのように情報の隠蔽(いんぺい)が疑われるようでは、世界的な危機に対処できない。

 日本は米国など先進諸国と足並みをそろえ、中国に対して国際的な調査団の受け入れを迫るべきである。

 中国政府は12日、新たに確認される感染者が減り続けているとして、「中国での流行のピークは過ぎた」と表明した。習国家主席は10日、武漢市を視察した。ネットでは習氏や中国政府を批判する声が削除され、習氏の指導力をたたえるコメントがあふれている。

 オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が「中国当局による隠蔽で世界の対応が2カ月遅れた」と批判したのは理にかなっている。本当に中国で流行のピークが過ぎたのか。天安門事件や新疆ウイグル自治区での弾圧をなかったことにしてきたのが中国政府だ。その対外発信を鵜呑(うの)みにはできない。

 WHOは中国政府寄りになっている。ここは、日米など先進7カ国が協力して専門家からなる調査団を中国に派遣し、実態を見極める必要がある。圧倒的に感染者数が多いのは中国である。その正確なデータを共有できなければ有効な手を打てない。

 アフリカなどの発展途上国は、医療態勢が整っておらず、感染症に極めて脆弱(ぜいじゃく)である。新型ウイルスの侵入が本格化すればひとたまりもない。

 先進諸国は自国の対応に追われているが、途上国への支援も忘れてはならない。

 トランプ米大統領は感染拡大を防ぐため、英国を除く欧州26カ国から米国への入国を、30日間停止すると発表した。これに欧州諸国は反発している。この局面で求められるのは対立ではなく協調であるはずだ。

 WHOのテドロス事務局長は、今回のパンデミックは制御できるとの見解を示した。ただ、これまでの対応を見る限り、説得力を感じられない。

 情報隠蔽を重ねてきた中国政府と歩調を合わせてきたのがWHOだ。感染拡大を招いた責任の一端があることを猛省しなければならない。

 ≪最悪の事態に備えたい≫

 安倍晋三首相は「国際社会と協力し対応を強める。警戒を緩めることなく、必要な対策は躊躇(ちゅうちょ)なく決断して実行する」と語った。

 政府が機敏に対応すべきなのはもちろんだが、都道府県や各地の医療機関、保健所、医師会などは国内での大流行という「最悪の事態」にも対応できる態勢を急ぎ整えてもらいたい。

 地域によって患者の発生動向も高齢化の程度も病床数も異なる。政府からの指示待ちではいけない。当事者意識をさらに強め、地域住民の命を救うため万全を期してほしい。

 検査の態勢整備が必要なことは言うまでもない。医師が必要だと認めた患者に検査ができないようでは適切な治療が施せない。

 治療薬やワクチンの開発を急ぐべきである。既存薬が効けば早く使える。国内ではHIV(エイズウイルス)やインフルエンザの薬による臨床試験が始まった。良い結果が出ることを期待したい。

 学校の一斉休校や大型イベントの自粛が続いている。家庭や経済へのダメージは否めないが、新型ウイルスの感染拡大を抑え込むためには、国民挙げての協力が必要である。

 食事や睡眠、換気、手洗いなど日々の感染予防は何よりも大切だ。医療機関ができるだけ混雑しないようにすることも感染拡大の防止につながる。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ