【主張】新型肺炎 デマを排し正しい情報を

 東京都の小池百合子知事は1月31日の記者会見で「そのような事実はない」と語気を強めて否定した。新型コロナウイルスによる肺炎をめぐりインターネット上に拡散した「東京五輪中止」のデマに対してだった。

 民放テレビニュースは「和歌山県内で感染者が確認された」とするネット上の誤情報を報じ、番組ホームページで謝罪した。

 国内だけではない。中国などでも「患者が逃げた」「バナナを食べると感染する」「イチゴを食べると予防になる」といった誤情報が飛び交っている。

 デマは混乱しか招かない。これらを排すためにも正しい情報の開示が求められる。受け手の側も情報を正しく取捨選択する術(すべ)を身につけなくてはならない。

 デマはまた、往々にしてヘイト(憎悪)表現を呼ぶ。ウイルスは国籍、民族を選ばない。「中国人は帰れ」「中国人立ち入り禁止」といった言説は誤りである。

 防疫上の対象者はあくまで感染が拡大する中国湖北省や中国全土の居住者、滞在者であり民族を対象としたものではない。

 同根の誤りは、イタリアの音楽院が日本人、韓国人を含む全ての東洋人のレッスンを一時停止した騒動や、フランスの地方紙が新型ウイルスの記事に「イエローアラート(黄色い警告)」と見出しをつけ、黄色人種全てへの警戒を示唆したことにもみられる。

 感染の拡大を防ぐために水際対策を徹底し、広く厳しい渡航制限を求めることと、デマやヘイト表現を蔓延(まんえん)させることは全く次元が異なる。混同してはいけない。

 災害や感染症に対峙(たいじ)するとき、必ずといっていいほど、デマが蔓延する。東日本大震災の原発事故では放射能汚染をめぐる悪質なデマや中傷に苦しめられてきた。熊本地震の際には、「ライオンが逃げた」とされる偽造映像が拡散された記憶も新しい。

 新型肺炎をめぐるデマの横行に対しては、フェイスブックやグーグル、ツイッターなどの米IT企業が、ソーシャルメディアで虚偽情報が拡散するのを防ぐ対策を打ち出した。

 熊本地震で「ライオン」の誤情報を投稿した当時20歳の男性は偽計業務妨害の容疑で逮捕された。デマやヘイト表現の発信や拡散は恥ずべき行為である。厳しく対処することも必要である。

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