【主張】次世代加速器 未来見据えて政治決断を

 宇宙と物質の成り立ちに迫るため、日米欧の物理学者らが東北の北上山地への建設誘致を目指す次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」について、日本学術会議は優先度の高い「重点大型研究計画」への選定を見送った。

 ILC誘致の議論は今後、大型研究プロジェクトに関する文部科学省の基本構想(ロードマップ)に記載されるか否かが焦点となる。学術会議の重点計画から漏れたことで、実現の道のりは険しくなったとの見方もあるが、科学技術の枠内の議論だけでILC誘致の是非に最終判断を下してはならない。

 ILC誘致の意義は、科学分野における国際貢献にとどまるものではない。国づくりの視点で議論し、できるだけ早く日本政府の姿勢を表明すべきである。

 たとえば、北上山地に形成されるであろう1万人規模の国際科学都市は、日本と日本人の国際化の指針となり、これを大きく前進させる可能性がある。

 欧米のほかロシア、中国、韓国やインドの参加も見込まれる国際協力プロジェクトで中心的な役割を果たすことは、国際社会における日本の存在感を大きく高めることになるはずだ。

 また、中国はILCとは別に次世代加速器を建設する計画を進めている。ILC誘致を見送れば、日本は相応の分担金を支払って中国の加速器実験に参加することになるだろう。落差は大きい。

 ILC誘致は、日本の安全保障にとっても重要な意味を持つと、認識しなければならない。

 日本学術会議は平成13年と18年にもILC誘致に慎重、消極的な見解を示してきた。10年間で4千億~5千億円と見込まれるホスト国負担が他の研究分野を圧迫することへの懸念から、内向きの議論に終始した。

 ILC誘致は、五輪や万博と並ぶような国家プロジェクトと位置付けて議論すべきである。

 世界のアスリートが約2週間にわたって集う五輪に対し、世界の科学者が20年にわたって日本で暮らすのがILCだ。単純に比較できないとしても、ILCの意義を議論する目安にはなるだろう。

 これまで政府が判断を先送りにしてきたために、国民的な議論も盛り上がりを欠いた。国際的信頼を損なう「遅延行為」をこれ以上続けてはならない。

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