【主張】山下IOC委員 競技者の「代弁者」であれ

 日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長が、国際オリンピック委員会(IOC)委員に就任した。

 東京五輪のマラソン・競歩がIOCの主導で札幌での開催に変更されるなど、日本はホスト国にもかかわらず、下風に置かれている。主役であるはずのスポーツ界は発言力を欠き、当事者意識も存在感も乏しい。

 日本人のIOC委員は15人目で、柔道界からは大日本体育協会(現日本スポーツ協会)を創設した嘉納治五郎氏以来となる。

 山下氏は1984年ロサンゼルス五輪の柔道無差別級金メダリストで、ロシアのプーチン大統領をはじめ、世界各地に幅広い人脈を持っている。強い発信力で、日本スポーツ界の存在感を高めてもらいたい。

 前任の竹田恒和・前JOC会長は東京五輪招致疑惑の責任を問われ、任期途中でIOC委員を辞任した。日本への信頼が揺らぐ中で、日本のスポーツ界を代表する山下氏がIOC委員となった意味は重い。

 もう1人のIOC委員である国際体操連盟会長の渡辺守成氏は、体操の普及や競技現場への新技術導入などに積極的だ。バッハIOC会長に行動力を買われ、五輪実施競技からの除外が危ぶまれたボクシングの立て直しにも奔走した実績がある。

 山下氏は就任直後の所信表明で「責任の重さを感じている。覚悟を持って役目を果たす」と述べた。だが、マラソン・競歩の札幌開催では、大会組織委員会副会長の職にありながら、目立った発言はなかった。

 IOCが夏季五輪の開催時期として固執する7月中旬から8月の日程は、巨額の放映権料を払う米メディアの意向を反映している。日本など北半球の中緯度国は、暑さや自然災害などの危険と背中合わせの大会運営を迫られる。

 その結果、花形種目であるマラソンなどの東京開催が撤回された。場当たり的な大会運営は、「選手第一」にほど遠い。

 山下氏には、IOCの論理で動く五輪のあり方に一石を投じる発言が期待される。80年モスクワ五輪の日本代表に選ばれながら西側諸国のボイコットで涙をのんだ苦い経験もある。だからこそ、スポーツ界の代弁者として選手本位の意見を発信する責任がある。

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