【主張】米報復自制 危機回避へ警戒を怠るな

 トランプ米大統領が、イランによるイラク駐留米軍への弾道ミサイル攻撃に対し、軍事的報復はしないと表明した。

 「イランは態度を後退させたようだ」とし、新たな経済制裁で圧力をかけ続けると強調した。

 報復の連鎖はひとまず回避された。だが、全面衝突の危機が去ったわけではない。米国の自制表明を受け、事態収拾へ国際社会は速やかに動かなければならない。

 トランプ氏は同時に、イランを「有力なテロ支援国家で、核開発を進めて文明社会に脅威を与えている」と改めて非難した。

 イランの最高指導者ハメネイ師は、攻撃後の演説で「米国は中東から去れ」と述べた。両国の敵対関係は全く変わっていない。

 今回の攻撃は国内向けには、殺害された革命防衛隊の司令官の「仇(あだ)討ち」を果たしつつ、全面戦争に至らぬ規模となるよう慎重に実施されたとの見方が強い。

 イラン指導部は数日前から米軍の拠点を標的とすると予告しており、米側は犠牲者はなかったと発表した。イランは直後に「反撃しなければ、対米攻撃は続けない」との書簡を送ったという。

 当面、懸念されるのは、イランが支援する中東各地のシーア派武装組織の動向である。殺害された司令官は対外工作の中心人物で、これらの組織の打撃は大きい。

 そうした武装組織が独自の報復の手段としてテロを実行することも警戒せねばならない。その場合、標的は中東地域、米軍拠点とはかぎらない。

 イランの指示の有無にかかわらず、武装組織のテロがあれば米国との関係は極度に緊迫する。イランは自制だけでなく、こうした武装組織を抑えねばならない。

 重大な問題は、米国とイランとの間に、パイプや話し合いの場がないことである。双方が「戦争は避けたい」といっても、計算が狂い、予期せぬ展開となる可能性は否定できない。

 国連安全保障理事会は、米国など拒否権を持つ常任理事国が当事国の場合、機能しない。仲介役を担いうるのは、イラン核合意の当事国でもある英国、フランス、ドイツのほか、日本しかない。

 安倍晋三首相は米国の自制表明を受け、「地域の情勢緩和と安定化のために外交努力を尽くす」と強調した。事態収拾へ向け、日本の存在感を示してもらいたい。

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