【主張】東京五輪・パラ 感動と興奮の大会を残そう 日本は開催国の責任果たせ

 例年になく胸が躍る。スポーツファンにとっては招致決定から7年近く待ち望んだ新年である。

 7月24日の夜、東京五輪は新国立競技場をメイン会場として開幕する。8月25日には、パラリンピックでも熱戦の号砲が鳴る。後世に長く語り継がれるような、感動と興奮に満ちた大会を、日本の総力を挙げて作り上げたい。

 ≪最高の「おもてなし」を≫

 大会組織委員会が掲げる3つの基本理念のうち、1つに「全員が自己ベスト」とある。日本代表選手が最高の競技成績を求められるのは言うまでもないが、組織委の公式サイトには、〈ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の「おもてなし」で歓迎〉とも書かれている。

 私たちには、まだ熱気が冷めやらない成功体験がある。昨秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会だ。どの会場も観衆が客席を埋め尽くし、熱狂的な声援で試合を盛り上げた。大会を総括した国際統括団体ワールドラグビー(WR)のビル・ボーモント会長からは「最も偉大なW杯として記憶に残る」と称賛された。

 今年の夏も、パラリンピックの閉幕まですべての会場を満場の観衆で埋め、アスリートを声のかぎり応援できれば理想的だ。一人一人が当事者としての意識を持ち、世界各地から訪れる人たちを歓待することも、誇るべき「自己ベスト」だろう。

 大会成功のカギは、国民が握っている。東京で開かれる五輪ではなく「日本の五輪」として、56年ぶりの夏季大会を迎えたい。

 各競技の代表選考レースも熱を帯びている。すでに代表入りを決めた選手がいる一方で、五輪への道が閉ざされた選手もいる。

 一握りの勝者の陰で、数多(あまた)の選手が悔し涙を流してきた事実も忘れたくない。

 今一度、思い出したい選手がいる。競泳女子のエースとして東京五輪での活躍が期待されながら、白血病で長期の入院生活を余儀なくされた池江璃花子だ。吐き気や倦怠(けんたい)感を伴う苦しい治療を経て、昨年12月中旬に退院した。

 池江は自身の公式サイトで「皆様からの励ましのメッセージを見て、早く戻りたいと強く思うことができました」と感謝の言葉をつづり、2024年パリ五輪への挑戦を誓っている。

 応援はときに、持てるもの以上の力をアスリートの中から引き出すことがある。その意味では、背中を押すファンもまた競技の主役といえるのではないか。

 ≪一体感再び味わいたい≫

 流行語となった「ONE TEAM」は、ラグビーW杯で初の8強入りを果たした日本代表フィフティーンの結束だけを指す言葉ではない。日本代表に思いを重ねて前進を続けたファンは、まぎれもなくチームの一員だった。

 東京五輪・パラリンピックでもう一度、その一体感を味わってみたい。

 日本オリンピック委員会(JOC)が掲げる「金メダル30個」の目標は、現時点ではかなり厳しいとみられている。昨年に行われた五輪実施競技の世界選手権では、日本勢の獲得した金メダル数は16個だった。野球のプレミア12での優勝を加えても17個で、各競技のさらなる奮起は欠かせない。

 メダル獲得が確実視される選手の陰に隠れてはいるが、もうひと伸びでメダル獲得や入賞できる可能性を秘めたアスリートも少なくない。観衆が送る大きな声援が、彼らの背中を表彰台へと押し上げられれば最高だ。

 大会の開催に伴う経費は、3兆円を超えるとの試算がある。東京が当初に掲げた「コンパクトな五輪」から実像は離れつつあるが、緊縮に固執するだけでは責任あるホスト国の姿勢とはいえまい。

 日本特有の暑さ対策、高度化するサイバーテロの脅威などに万全の準備を整え、選手や観客の安全を約束することが日本の責務だ。世界が注目している。日本の信用を世界に発信する上でも、必要な投資を惜しんではならない。

 競技力向上のための選手強化費は、来年度当初予算で101億円が盛り込まれた。スポーツ界は国民の手で支えられている。だからこそ、その代表である選手たちに国民は大きな期待をかける。

 日本勢の活躍は国民の誇りであることを選手は忘れないでほしい。わが国を挙げて一つのチームとなり、歴史を残そう。

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