【主張】米「入植容認」 中東和平に展望あるのか

 またもトランプ大統領による米中東政策の極端な転換である。イスラエルの占領地ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植活動について、事実上容認する立場が示された。

 ポンペオ米国務長官は「従来の政策は機能しなかった。中東和平の大義を促進させることはなかった」と述べた。

 カーター政権は1978年、入植は「国際法と矛盾する」との見解を表明した。ポンペオ長官も指摘するが、歴代政権がこの姿勢で一貫していたとはいえない。

 だが、オバマ政権は2016年、入植地建設を国際法違反として停止を求めた国連安全保障理事会の決議採択を容認している。

 米国は「棄権」だったが、拒否権行使の選択肢もあった。安保理常任理事国として、決議に背を向けてはならないはずだ。

 自ら決議を無視すれば、北朝鮮制裁決議で関係国に厳格履行を求めても、説得力を欠くことになるからである。

 国際社会は、パレスチナ国家を樹立し、イスラエルとの「2国家共存」を目指す中東和平プロセスに取り組んできたが、和平交渉は14年を最後に途絶えている。

 パレスチナ自治区のある西岸地区には約40万人のユダヤ人が点在して暮らし、入植問題は和平交渉の争点の一つである。入植拡大を放置してはなるまい。

 トランプ政権は、17年12月、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、今年3月には、占領地のゴラン高原について、イスラエルの主権を承認した。

 対するパレスチナには強硬な姿勢を取る。ワシントンの代表部を閉鎖し、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を中止した。

 トランプ政権はイスラエルに新政権が発足すれば、新たな中東和平構想を発表するとしているが、政策転換の先に何をしようとしているのか全く見えない。展望を欠くとすれば、極めて危うい。

 国際社会の声に耳を貸すことなく、単独で極端な政策転換を進めている点も問題である。日本を含む多くの国が入植を「違法」とみなしている。

 来年の大統領選での再選をにらみ、自身の有力な支持基盤で親イスラエルのキリスト教福音派にアピールする。トランプ氏の中東政策はそのための道具とみられても仕方あるまい。

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