【主張】原発処理水 海洋放出の具体化に動け

 東京電力福島第1原発の放射能汚染水を浄化した後の処理水が敷地内のタンク群にたまり続けている。

 この処理水の処分方法を検討する経済産業省の小委員会が、全量を1年間で海や大気に放出しても被曝(ひばく)線量は少なく、放射線の影響は「十分に小さくなる」という評価結果を発表した。

 国連科学委員会(UNSCEAR)の評価モデルで算出した明確な数値に基づく結論だ。海洋放出などへの風評不安を一掃する根拠となることを期待したい。

 処理水には放射性物質の除去装置を通した後も残るトリチウムが含まれる。その全量は860兆ベクレルだが、1年で海に放出しても被曝線量は年間0・052~0・62マイクロシーベルトにすぎない。

 普通に暮らして自然に被曝する線量は年間2100マイクロシーベルト(2・1ミリシーベルト)なので、圧倒的に少ないわけだ。「十分に小さくなる」だけでなく事実上、無視し得る量である。このレベルを気にするようなら、国際線の航空機にも乗れない。花崗(かこう)岩地域の西日本にも住めなくなるだろう。

 処理水中に残るトリチウムは、放射線のエネルギーが弱く、体内に入っても速やかに排出されるので、海洋放出を過度に心配することがない根拠となっている。

 トリチウムは通常の原子炉の運転に伴っても発生する。それを希釈して海に放出することが世界の原発で行われているのは、この性質によるものだ。

 韓国の原発もトリチウムを大量に、日本海に流している。にもかかわらず、福島第1原発の処理水の太平洋放出について、国際会議の場などで風評被害をあおるがごとき言辞を繰り返すのは、どうしたことか。

 東京五輪を控えた日本のイメージをおとしめる底意があるとすれば友好を深めるべき隣国としてあまりにも情けない行いだ。

 だが、猛省が求められる点では日本政府も同列だ。第1原発の敷地内に貯蔵タンクが増え続け千基近くになるのを傍観してきた感がある。処理水貯蔵量は100万トンを超えている。3年以内に貯蔵スペースがなくなる見通しだ。

 処理済みとはいえトリチウム水の莫大(ばくだい)な量が風評の源となっている。放出に向け、国民が安心できる客観データは整った。残るのは安倍晋三首相の決断だ。

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