【主張】国語世論調査 豊かで正しい言葉育もう

 言葉は常に変化するものだ。慣用句などの誤用が広がり一般化することは知られているが、教育によるとみられる興味深い結果が文化庁の平成30年度国語に関する世論調査で明らかになった。

 全国16歳以上の男女1960人に「憮然(ぶぜん)」という言葉について聞いたところ、全体では、本来の意味とされる「失望してぼんやりとしている様子」と答えた人の割合は28・1%だった。本来の意味ではない「腹を立てている様子」とした人は56・7%だった。

 ところが年代別にみると「失望」と正しく答えた人は60代では18・6%だったのに対し、16~19歳の10代では69・5%に上っていたのである。逆に「腹を立てている」と答えた人は60代で64・2%で、10代はわずか22%だった。

 意外な数字だが、「憮然」については15年度、19年度の調査でも聞いていた。その調査結果は学校の授業などで使われることがあり、若い人ほど正しい意味を学ぶ機会が増えたためとみられる。教育現場の力が発揮された結果といえよう。

 ただし、全ての言葉について同様の結果になったわけではない。今回初めて聞いた慣用句の「砂をかむよう」では、本来の「無味乾燥でつまらない様子」と答えた人は60代では42・9%だったが、10代では22%にとどまった。本来の意味ではない「悔しくてたまらない様子」と答えた人が、10~50代で6割を超えていた。担当者は「漫画などで悔しいときに登場人物がハンカチをかむ描写が出てくるためでは」と推測する。

 また、本来とは違う言い方が広がる実態もわかってきた。

 自分の言葉に嘘偽りがないと固く約束することを、「天地天命に誓って」という人が全体の53・7%に上った。本来の言い方とされるのは「天地神明に誓って」だが、こちらは32・1%だった。

 神を意味する「神明」は普段あまり使われない言葉だが、「天命」は「天命を待つ」など一般に使われることが多い。いわば耳慣れている単語で、語呂もよいことから「天地天命」という言い方が広がった可能性がある。

 言葉は生き物であり、古来、誤用が定着してきた歴史も長いが、「憮然」のように現場で正しい使い方が浸透することは教育の本懐だ。若い人こそ、正しい言葉に慣れ親しんでもらいたい。

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