【主張】民間試験の見送り 英語政策全体の見直しを

 大学入学共通テストの英語民間検定試験について、萩生田光一文部科学相が令和2年度からの実施見送りを発表した。この判断は妥当だが、決定が遅すぎたことなどはお粗末極まりない。

 文科省は、受験生を振り回した責任を明確にするとともに、英語教育を民間試験頼みとする安易な政策全体を見直すべきだ。

 萩生田氏は「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べた。受験生の「身の丈」どころか、制度自体に無理があるのは明らかだった。

 民間試験の日程や会場が決まっていない準備不足のほか、居住地域や家庭の経済状況次第で受験機会の格差が出ることを見送りの理由に挙げた。いずれも以前から指摘されてきたことである。

 全国高等学校長協会は「先が見通せないほど混乱している」という厳しい言葉で延期を要請していた。現場の声を真摯(しんし)に聞く姿勢を欠いては教育行政を担えない。

 共通テストの英語は、マークシート方式試験との併用で、英検など民間6団体7種の試験を利用する計画だった。5年後に向けて抜本的な見直しをするというが、民間試験ありきでは同じ過ちを繰り返すことになる。

 大学の個別入試では民間試験の成績を加点する例もある。だが、数十万人が受験する共通テストでの一律利用が難しいことは、今回の問題をみても明らかだ。

 難易度が異なる民間試験について、文科省は国際評価基準に当てはめて6段階で区分しており、これが適切なのかという批判もある。国立大学協会は一定以上のスコアを出願資格とするなどの指針を示したが、中学卒業程度のレベルしか課さない大学も目立ち、制度が骨抜きにされていた。

 そもそも、文科省が目指す英語教育の方向性にも疑問がある。

 文科省は小学校から英語を教える早期化や、英会話力などのコミュニケーション重視といった改革を進めてきた。民間試験利用もその一環だ。だが、英語は使う環境や目的がなければ身につかないと多くの専門家が指摘する。中学、高校時代は基本的な英文法などの土台を固める必要がある。

 コミュニケーションの基礎は、言語を問わず相手の言葉をよく聞き、理解する読解力だ。これは確かな国語力に支えられる。土台を欠いた改革は危うい。

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