【主張】マラソンの札幌案 IOCも責任の一端負え

 現場に混乱を招いておいて、責任は負わないのか。東京五輪のマラソン・競歩について、国際オリンピック委員会(IOC)が示した札幌開催案は、課題が次々と指摘されている。

 費用負担をめぐり、東京都や大会組織委員会などが繰り広げる責任の押し付け合いにもIOCは頬かむりしており、腹立たしさを覚える。決定が遅れれば、迷惑を被るのは選手たちだ。夏の暑さばかりが取り上げられ、東京の印象まで悪くなりかねない。

 都や組織委は30日から、IOC調整委員会と協議を行う。開催地決定が急を要するのは当然だが、一方的な発表で札幌案を既成事実化したIOCのやり方は乱暴に過ぎる。開催都市をかやの外に置いた今回の経緯に東京側は抗議し、説明を求めるべきだ。

 IOCは札幌ドームを発着点とする案を示したが、出入り口の狭さから改修工事が必要となるなど実にお粗末な中身だ。発着点の候補に挙がっている大通公園も夏祭りの期間中という課題がある。

 メダリストを東京に移動させて表彰式を行うとする提案も、セレモニーありきで「選手第一」にほど遠い。なぜレース中に気温の下がる夕方ではなく、日が高くなってゆく午前の開催を念頭に置いているのか理解に苦しむ。

 札幌開催で生じた余分な費用についても、IOCは責任を負うべきではないか。東京で行うマラソン・競歩の開始時間を早朝にする過程には、IOCも関わっていたはずだ。五輪憲章は、財政面や運営面でIOCが責任を負わないとしているが、情勢の変化に応じて都合よく五輪の形を変えてきたのはIOCである。

 選手の健康を考えれば、東京の夏が看過できないほど暑いのは事実だ。その対策として、都は約300億円かけて遮熱性の高い路面舗装を進めてきた。札幌開催があらゆる面で東京を上回るというなら、IOCは、納得のいく説明を尽くすべきである。

 日本オリンピック委員会(JOC)が沈黙しているのも問題だ。盛夏に開催する夏季五輪は限界を迎えている。

 日本のスポーツ界はそうした現実をIOCに突きつけてほしい。一部の競技・種目を冬季五輪に移すなど、選択肢を示す姿勢をなぜ見せないのか。言いなりとは、実に情けない。

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