【主張】IS指導者死亡 報復テロへの警戒強めよ

 世界各地にテロを拡散させたイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)指導者、バグダディ容疑者が米軍の急襲により死亡した。

 米軍は拘束した関係者の供述からシリア北西部の潜伏先を割り出し、特殊部隊が踏み込むと、容疑者はトンネル内に逃げ込み自爆したという。

 バグダディ容疑者はシリアとイラクにまたがる地域でテロ組織による国家樹立を企て、ISは外国人殺害の様子をネット上に流すなど残忍な手法が際立った。

 暴力を頼みとする無法行為は絶対に許さないという、米国の断固たる姿勢を示したといえよう。世界的なテロとの戦いにおける重要な節目とも位置づけられる。

 もちろん、これにより、テロの脅威が消えるわけではない。

 ISの関連組織が北アフリカやアフガニスタンなどに存在し、元戦闘員は欧州などに潜伏しているとされる。報復テロに対し、むしろ警戒を強めねばならない。

 テロ組織としてのISの最大の特徴は、ネットを利用して、暴力的過激主義を世界中にばらまいたことである。

 戦闘員はイスラム圏だけでなく欧米からも受け入れた。共感し単独でテロに走った者もいる。ISはネット上で関与を主張し、組織の存在を大きく見せた。

 その過激思想はネット上で生き続けているとみなければならない。経済格差に不満を抱き、社会に疎外感を抱く若者らが各地にいる。感化されないよう各国で対策を講じる必要がある。

 ISの教訓は、このテロ組織が米軍のイラク撤退とシリア内戦で生じた「力の空白」をついて支配地を拡大させたことである。

 シリア内戦はいま、トルコの北東部への浸透で複雑化した。イラクも反政府デモで揺らいでいる。両国でテロ組織台頭の恐れがなおあると認識せねばならない。

 米軍特殊部隊によるバグダディ容疑者急襲作戦の成功は、駐留部隊が目に見える形で現地に展開しながら各国部隊と連携し、作戦実施の支援にあたったことも大きいとみられる。

 中東のほか、和平交渉が難航するアフガニスタンなどにあっては、テロ組織の活動を封じるためにも米軍の存在自体が極めて重要である。撤収を急いではならない。トランプ米大統領には慎重な判断を求めたい。

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