【主張】香港長官の更迭説 強権の手駒では無意味だ

 香港情勢混迷の発端となった「逃亡犯条例」改正案が、正式に撤回された。香港特別行政区政府トップの林鄭月娥行政長官の更迭説も前後して浮上した。

 更迭説は英紙フィナンシャル・タイムズが伝えた。中国政府は「下心のある政治デマだ」と否定した。

 改正案を撤回しても、行政長官を今後更迭するとしても、それだけでは香港市民は満足しないだろう。香港の人々が求める自由と民主はもっと高みに至っている。小手先の対応では情勢の安定は期待できまい。

 改正案の撤回は9月初めに林鄭氏が表明したが、その後も抗議は激しさを増し続けた。今ごろ香港政府の保安局長が、立法会(香港議会)で正式撤回を宣言しても収まるものではない。

 立法会で問われるべきは、林鄭氏が戒厳令に等しい「緊急状況規則条例」(緊急法)を10月に発動した判断の是非である。緊急法の下で制定された「覆面禁止法」は香港市民から猛反発された。完全に無意味となっていることは親中派議員も分かるはずだ。「一国二制度」を掲げるのなら、この切羽詰まった状況で、立法会が民意に背を向けることは許されない。

 立法会の議場では、林鄭氏の施政方針演説が民主派議員の抗議で中止に追い込まれてもいる。

 事態を混迷させた最大の責任は、林鄭氏を操る中国政府の強権姿勢にある。更迭説の裏に、責任を林鄭氏に負わせて幕引きを図ろうとする中国の思惑があるとするなら姑息(こそく)に過ぎる。

 英紙が報じた更迭説は、林鄭氏の後、暫定長官を立ててそのまま2022年までの残り任期を務めさせる構想を、中国が検討しているとの内容だ。後任には政務官や金融管理局総裁の要職を経験した人物の名が挙がっている。

 これでは誰が長官になろうとも、強権中国の筋書きで動く手駒であるという点で何も変わらない。更迭を機に「普通選挙」(直接投票)実現を求める抗議デモは、むしろ激化するはずだ。

 中国の専横を抑えるには、国際社会が声を上げ続ける必要がある。安倍晋三首相は王岐山中国国家副主席との会談で、香港情勢について「大変憂慮している」と発言した。だが、それだけでは足りない。中国を厳しく監視し続ける気概を示してほしい。

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