【主張】トルコ越境攻撃 米の不干渉は許されない

 トルコのエルドアン政権が、欧州諸国など国際社会の反対を押し切って、隣国シリア北部のクルド人勢力に対する軍事作戦を開始した。

 クルド人勢力も反撃し、住民を含む多数の死傷者が出ている。

 8年半に及ぶ内戦下のシリアで新たな避難民が発生するなど、人道危機が深まることを憂慮する。トルコは直ちに攻撃を停止すべきだ。

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が混乱に乗じて復活することも大きな懸念だ。この地域で1万人以上の元戦闘員が拘束されているという。

 この事態に対して、国連安全保障理事会は一致した見解を示せなかった。英仏独などが戦闘の「停止」を求めたが、米国が「支持しない」にとどめたからだ。

 トルコは、自国内で独立闘争をするクルド人武装組織と、シリアのクルド人勢力を一体とみなしている。だが、このうちシリアのクルド人勢力については、IS掃討戦で米軍と共闘関係にあった。

 それにもかかわらず、トランプ米大統領はトルコの攻撃に干渉しないと示唆していた。これではIS掃討の地上戦で主力となったクルド人勢力を見捨てたに等しい。実際、トルコが越境攻撃を開始したのは、この地域から米軍が撤退した直後である。

 米軍は世界中で、テロ警戒や航行の自由の維持のため、同盟国の部隊や同盟勢力を率い、共同任務に就いている。こうしたパートナーの信頼を損なう行為である。

 2011年の米軍のイラク撤退がIS台頭を招いた。シリア内戦はオバマ前政権が軍事介入をためらったことで事態が悪化した。

 中東で米軍の存在は大きく、無関心は許されない。トルコに攻撃の停止を求めるべきである。

 トランプ氏が米軍撤収を急ぐのは、来年の大統領選を意識したものだろう。大国の指導者としてあまりに無責任というほかない。

 もちろん、日本などの同盟国が米国の負担を軽減する努力も必要である。遠い地域の問題では済まされない。IS復活などの事態になれば、世界中がテロや過激思想蔓延(まんえん)の脅威にさらされる。

 安倍晋三政権は、米国とイランが対立する中東で緊張緩和に貢献したいと再三表明している。首相はエルドアン大統領とも良好な関係だ。中東全体の安定に向け踏み込んだ役割を果たしてほしい。

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