【主張】低年金者支援 適切に届く議論を深めよ

 消費税率の10%への引き上げに伴い、低所得の年金受給者の暮らしを後押しする「年金生活者支援給付金制度」が始まった。約970万人が対象となる恒久的な措置である。年約6千億円の財源は、消費税収の増加分で賄うことになる。

 年金の最低保障機能を強化する施策である。個々の給付額は保険料を納めた期間の長さに応じて決まる。納付期間が長い人ほど額を多くした制度設計は妥当だといえよう。

 ただ、支援を必要としている人に適切に届いているのか、引き続き検討すべき課題があることも認識しておかなければならない。

 人口減少や長寿化が進み、年金の給付水準が緩やかに下がることを考えると、低年金者対策はますます重要になる。政府は、もっと議論を深めるべきである。

 10月の年金への上乗せ分は12月に支給される。老齢基礎年金を満額(約78万円)受け取る人で年6万円が支給され、1割近い収入増となる。対象は、年金とその他の所得が合計で約88万円より少ない人だ。世帯に住民税が課税される人がいないことも条件とした。

 問題は、年間収入や、課税か非課税かという観点だけで対象を決めることの妥当性である。高齢者には貯蓄が多い人もいれば、不動産がある人もいるだろう。これらは反映されていない。しかも遺族厚生年金などの「非課税年金」は収入に含めない仕組みである。

 こうした枠組みが適切なのか。それを判断するには、資産状況をいかに把握すべきか、公平な年金課税はどうあるべきかなどについて、腰を据えて議論する必要がある。政府が新たに設置した全世代型社会保障検討会議がその役割を担うべきなのに、その兆候がみえないことが気がかりだ。

 将来世代に禍根を残さぬためにも、年金の給付水準が低下するのはやむを得ない。年金制度を持続可能にするには水準を抑える「マクロ経済スライド」の実施が欠かせないが、これが遅れたため後世代の年金水準が圧迫された。

 そんな中で今後の最低保障機能をいかに強化していくかは難しい課題である。保険料を多く納めた人が、より多くの年金を受け取るのが基本だが、給付の少ない人への配慮も必要だ。一方で財源の手当てがつかない議論もあり得ない。そこに政権がどう向き合うのかが問われているのである。

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