【主張】ゲノム編集食品 風評禍の阻止に取り組め

 ゲノム編集技術を使った食品について、流通と販売の届け出制度が1日から始まった。厳正な安全審査と適切な情報開示に資する制度としなければならない。

 ゲノム編集食品であることの表示に関しては義務化が見送られた。既存の品種改良との区別が技術的に困難であることがその理由である。

 消費者の「知る権利」「選ぶ権利」が守られないといった批判もある。ただし、ふさぐことのできない抜け穴がある規則は、不正や混乱の原因となる。知る権利や選ぶ権利をかえって阻害することにもなりかねない。

 表示義務化とは別のアプローチで、適切な情報開示を実現する必要がある。

 そのためには、間違った認識や過剰な不安を払拭し、ゲノム編集食品を「風評禍」にさらさないことが重要だ。

 ゲノム編集が歴史の浅い技術であるために、多くの人が漠然とした不安を抱く。「予期せぬ変異のリスクがゼロでない」「自然界の変異と同じとは思えない」と不安視する声もある。

 決して間違いではない。

 ただし、この主張や考えが不特定多数に向けて発信されたとき、ゲノム編集・遺伝子変異・リスクという断片的な言葉から、食品に施した遺伝子変異が直接、人体に及ぶかのような不安が抱かれないか。また自然のままに育った動植物が安全で、人為的操作が加わった食品は危険であると思い込みはしないか。

 牛肉をいくら食べても人は牛にはならない。食材のゲノムが人体に及ぶような不安は消し去るべきだ。トラフグの肝や毒キノコは自然のままに育っても有害だ。発芽の際に毒性を持つジャガイモは放射線照射によってリスクが解消される。安全上の問題もない。

 過剰な不安や間違った認識を排除すれば、漠然とした不安の実体は相当程度に小さくなるだろう。そのうえでゲノム編集食品のメリットとリスクを評価することが消費者にとっても利益になる。

 風評を懸念して生産・流通業者が情報開示に消極的になり、消費者の不信を増大させるという悪循環にも陥らない。

 「知る権利」「選ぶ権利」を要求する側にも、過剰な不安や間違った認識が持たれないよう、情報発信には配慮が求められよう。

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