【主張】北「SLBM」発射 最大限の圧力に回帰せよ

 日本や世界の安全保障にとって極めて深刻な事態である。

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、島根県・隠岐諸島の島後(どうご)沖約350キロ付近の日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾した。北朝鮮が自国の領海だと偽りの主張をする好漁場「大和堆(たい)」の周辺海域とみられる。

 発射は国連安全保障理事会決議違反である。船舶や航空機にたまたま被害はなかったが、事前通報なしにEEZへ着弾させることも危険極まりない。政府が北朝鮮に抗議したのは当然だ。

 今回の飛距離は約450キロ、最高高度は約910キロで、通常よりも高い角度で打ち上げ、迎撃を困難にさせる「ロフテッド軌道」をとった。本来の射程は千キロ以上の日本に届く中距離弾道ミサイルに相当する。

 韓国軍によれば、北朝鮮・元山沖約17キロの海から発射された。潜水艦または実験用発射台から、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を飛ばしたと疑われる。

 北朝鮮のSLBM発射は平成28年8月以来となる。日本のEEZへの着弾は、29年11月に「ロフテッド軌道」をとった大陸間弾道ミサイル(ICBM)が青森県沖に着弾して以来だ。

 今回の発射は、トランプ米大統領が容認してしまった「短距離」とは到底言えない。北朝鮮が戦力化を進めるSLBMは固体燃料で、奇襲的に運用できる。

 技術的に立ち遅れた北朝鮮の潜水艦といえども、緊張時に自衛隊や米軍が見つけ出して無力化する前に核ミサイルを日本などへ発射されればおおごとである。多くの航空機や艦船を北朝鮮潜水艦への対応に割かねばならなくなる。

 今回の発射について河野太郎防衛相は「わが国の安全保障に対する深刻な脅威」と断じたが、安倍晋三首相と菅義偉官房長官は安保理決議違反と航空機、船舶への危険にしか言及しなかった。自国への脅威と正面から受け止めないような認識では国家安全保障会議(NSC)を何回開いても、心許(こころもと)ない。

 北朝鮮がミサイル発射を控えたのは経済と軍事両面で「最大限の圧力」を受けた時期だけだ。安倍首相はトランプ大統領や国際社会に働きかけ、安保理招集による制裁強化に乗り出すとともに、米国を「最大限の圧力」路線へ回帰させなければならない。

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