【主張】北朝鮮と非核化 国際社会は危機感共有を

 世界の首脳が集い、意見表明する国連総会の一般討論演説が終了した。北朝鮮の脅威を論じ合う機会とすべきだったが、この問題が、サウジアラビアの石油施設攻撃や米国・イランの対立などの陰に隠れたことが残念でならない。

 安倍晋三首相の演説にも踏み込んだ発言はみられなかった。拉致・核・ミサイル問題を包括的に解決するという従来の方針を表明し、金正恩朝鮮労働党委員長に直接対話を呼びかけたくらいである。

 国際社会が北朝鮮に隙を見せないよう、引っ張る役割を担うのは日本しかない。首相には、もっと強い姿勢を示してほしかった。

 北朝鮮は外相すら派遣せず、国連大使が最終日に登壇し、米朝交渉の膠着(こうちゃく)は「米国の敵視政策のせい」などと一方的に主張した。

 北朝鮮の核・ミサイルの脅威はまったく減じていない。それなのに金委員長は非難を浴びず、非核化への行動を起こさないことに警告を与える機会を逃したのである。危機感があまりにも希薄だと言わざるを得ない。

 留意すべきは、ひとたび中東で問題が起これば、世界の注目がそこに集まり、北東アジアへの関心が薄れることだ。北朝鮮は自らへの警戒が緩んだとみるだろう。

 欧州で核問題といえば、いわゆるイラン核疑惑のことである。それが2015年の核合意で一段落し、北朝鮮に目が向くようになった。その核合意も、米国が離脱し、イランも履行義務を一部停止して破綻の危機にある。再交渉の可能性も指摘され、米欧の関心は当面、ここに集中しよう。

 北朝鮮が発射を繰り返す短距離弾道ミサイルについては、安倍首相もトランプ米大統領も演説で言及しなかった。首相は日米首脳会談で「国連安全保障理事会の決議違反」と指摘したが、トランプ氏の発言は伝えられていない。これは日本にとっての直接の脅威である。首相はその点をどこまでトランプ氏に説明したのか。

 韓国の文在寅大統領は演説で、非核化実現には「安全の保証」や経済協力が不可欠とするなど北朝鮮への配慮が目立った。これで日米韓の連携を保てるのか。

 北朝鮮問題での国際社会の結束が後退しているなら深刻だ。日本政府はその点を厳しく認識し、危機感を共有できるよう各国に働きかけなければならない。

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