【主張】かんぽ不適切販売 解体的出直しの覚悟示せ

 かんぽ生命保険の不適切販売問題をめぐる日本郵政グループの調査報告で、不適切事案が過去5年で6千件を超えていたことが分かった。調査を終えたのは対象の約4割にすぎず、今後、さらに膨らむとみられる。

 異常な多さであり、しかも悪質である。法令違反の疑いがあるものは約1400件もあった。金融庁に届け出た法令違反件数は年20件程度である。桁が違う実態からは法令順守意識のかけらもみえない。

 かんぽへの不信はさらに強まった。それでも来年1月から販売を再開するという。信頼回復とは程遠いのに、顧客が再開に理解を示すと考えているのだろうか。

 経営陣の責任は極めて重い。残る調査の徹底は当然である。その上で経営責任を明確にし、組織や業務を解体的に改めないかぎり、再出発はあり得まい。

 平成26~30年度に保険料の二重徴収などの不利益を与えた疑いのある約18万3千件を調査した。法令違反のほか社内規定違反もあった。弁護士による特別調査委員会が、現場の実力に見合わない営業目標などが背景にあると指摘したことを重く受け止めるべきだ。不利益が生じた顧客に保険料返金などを行うのは当然である。

 来年1月の販売再開としたのは、特別調査委員会が年内に報告書を作ることなどを踏まえたものだが、再開ありきの姿勢はなかったか。そもそも販売再開は10月の予定だった。先送りしたのは、調査や再発防止策が思うように進んでいないためである。

 年内中にそれが果たせると考えるのは楽観的かもしれない。業績悪化を避けようと、甘い見通しで再開を急ぐなら本末転倒だ。金融庁が行政処分を下せば新たな対応が求められるはずである。

 特別調査委は、問題が経営陣に伝わる過程で情報が「希薄化・矮小(わいしょう)化された」とも指摘した。だが経営陣が深刻さを過小評価した面はなかったか。昨年、NHKが報じた際にはNHK経営委員会に統治強化を要請した。今年6月には「法令違反はなく、不適切なものはない」としていた。対処すべき機会が何度もありながら、そうしなかった責任は見過ごせない。

 日本郵政の長門正貢社長は「膿(うみ)を出し切るのが当面の経営責任だ」と述べた。だが、その覚悟自体が問われていることをもっと厳しく認識すべきである。

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