【主張】中国建国70年 強権の暴走に監視強めよ 経済力と一体の軍拡に警戒を

 中国は1日、1949年の建国から70年を迎えた。首都北京では軍事パレードなどの盛大な祝賀行事が行われる。覇権の追求に向けて人民を鼓舞するのだろう。

 他方で中国には不都合な現実がたくさんある。香港では中国支配への抵抗が衰える気配がない。当局の規制をよそに1日も大規模デモや激しい抗議が予想される。

 抵抗運動の学生指導者、周庭氏は、一般市民を巻き込む根強い抵抗の理由に「香港が中国になってしまう恐怖感」を挙げた。

 北京の指導部が「当然」と考える香港の中国化に香港市民は恐怖を感じる。これこそ中国の強権政治が持つ本質である。

 ≪香港の「恐怖」が本質だ≫

 このまま中国共産党の独裁下で覇権の確立へと邁進(まいしん)するのか、それとも政治的な自由や人権を重視した別の道を模索するのか。建国70年の節目を迎えた中国は、大きな岐路にさしかかっている。

 習近平国家主席は、この現実を真摯(しんし)に見つめるべきである。

 中国共産党は、革命闘争の勝利を正統性の根拠として一党独裁による支配を続けてきた。その間に公正な直接選挙による国民の審判を一度も受けていない。

 一党独裁下の70年は、悲惨な事件の連続だった。

 「反革命鎮圧」を掲げた大量粛清に続き、急進的な社会主義化で迫害が相次いだ。続く大躍進運動や文化大革命でも膨大な犠牲者を出した。だが、信頼し得る検証はなされていない。30年前の天安門事件も真相は藪(やぶ)の中である。

 過去だけではない。新疆ウイグル自治区では、今も多くのイスラム系住民が「再教育」の名の下で強制収容されているのに、それが何万人なのかも不明である。

 常識では考えられないことがまかり通っている。昔も今も、人権が軽んじられている事実をしっかりと認識しなければならない。

 確かに、中国は世界2位の経済大国になった。旧ソ連型の計画経済と決別し、変則的ながら市場経済を取り入れた結果である。

 天安門事件と東西冷戦の終結で共産党の信望は失墜した。経済力をつけなければ、かつて「兄」と仰いだソ連共産党と同じ運命をたどったことは疑いあるまい。

 当時最高実力者だったトウ小平の政略で共産党政権の存立には成功した。だが、豊かになれば人権尊重や段階的な民主化に動くとみた国際社会の期待は見事に裏切られた。忘れてはならない歴史だ。

 しかも権力の暴走は、いよいよ歯止めを失ってきた。習氏は汚職撲滅を掲げた政敵排除で権力基盤を固め、憲法を改正して国家主席の任期制限まで撤廃した。

 任期制と集団指導体制は、毛沢東が終身権力を独占した弊害を教訓に導入された。それをあっさりと覆す権力集中だ。独裁を強めるこの変化を、国際社会は見過ごしてはならない。

 ≪日本は前のめり避けよ≫

 軍事パレードには、米国を射程に収める移動式弾道ミサイルをはじめ、多数の先端兵器が登場すると見込まれる。透明性に欠ける国防政策の下での軍備拡張の脅威は一段と高まるだろう。

 70年前に内戦に敗れた中国国民党が拠点を移した台湾では民主化が定着した。その台湾で行われる来年1月の総統選に対し、中国は武力行使の可能性を示して圧力をかける。とても容認できない。

 共産党政権は、巨額の国防費やこれを上回る可能性のある治安対策費を投じて、その力を内外で誇示する。巨大経済圏構想「一帯一路」も、札束をばらまいて中国優位の国際秩序を目指す試みだ。

 経済力に吸い寄せられるように中国になびくのは危うい。経済成長が軍拡や国内弾圧を支えている事実は、日本企業にもしっかりと認識してもらいたい。

 習政権自らが政治改革を断行して民主化に動くことは期待しづらい。そうだとしても力の支配は中国国民だけでなく、アジアの安全保障にとっても脅威である。国際社会がなすべきは、中国の人権への監視を強めることだ。その上で天安門事件後に放棄された政治改革を断固として求めるべきだ。

 米国は中国の覇権を阻もうとあらゆる手を尽くしている。日本も同様の危機意識で中国の脅威に対処する必要がある。日本は天安門事件後、いち早く対中支援を再開して強権支配の復活を助けた。関係改善を急ぐあまり同じ轍(てつ)を踏まないよう改めて求めたい。

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