【主張】気候サミット 情緒排して着実な削減を

 世界の首脳が地球温暖化を議論する気候行動サミットで、77カ国が2050年までに温室効果ガスの排出量を「実質ゼロにする」と表明した。

 温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」が来年から本格的に運用されるのを控え、さらなる具体策を示すよう求めた国連のグテレス事務総長の呼びかけに各国が応えた。

 もっとも、77カ国の多くは発展途上国だ。協定から離脱した米国のほか、中国やインドなど主要排出国は削減目標の上積みや前倒しを示さず、従来目標を順守する姿勢にとどまった。日本も同じである。これでは温暖化対策が具体的に進展したとはいえまい。

 各国が高い目標を掲げて排出削減に取り組むことは重要だが、理念や理想論が先走るようでは実効性のある対策となり得ない。各国が現実を踏まえて着実に削減を進めることこそが肝心である。

 日本も安全性を確認した原発の活用に加え、これまで培った高い環境技術を海外に提供することなどで温暖化防止に貢献したい。

 パリ協定は、世界の気温上昇を産業革命前に比べて少なくとも2度未満、できれば1・5度以下に抑える目標を設定している。それには50年の排出量を実質ゼロにする必要がある。

 ただ、協定締結後も世界の気温上昇に歯止めはかからず、異常気象が頻発している。グテレス氏が「気候非常事態」と危機感を示して各国に計画上積みなどを求めたのはこのためで、短期目標の前倒しを表明した途上国もあった。

 気になるのは、グテレス氏が石炭火力の新設中止を提案したことだ。稼働中の老朽化した石炭火力を環境性能が高い石炭火力に建て替えれば、発電量を保ちつつ着実に温室効果ガスを減らせる。この現実を踏まえず一律に石炭火力を否定するのは適切ではない。

 サミット関連会合で、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(16)が「私たちを裏切るのなら、あなたたちを決して許さない」と各国首脳に厳しい規制を訴えたことも注目された。

 私たちには将来世代に対する責任がある。その責任には環境保護だけでなく、経済発展を通じた途上国の貧困撲滅や保健衛生、教育機会の提供などもあることを忘れてはならない。情緒に流されるのではなく、全体を俯瞰(ふかん)した冷静な取り組みが必要だ。

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