【主張】諫早の最高裁判決 国は解決への責任果たせ

 長く続いた法廷闘争に終止符を打てるよう、和解に向けた協議が進展することに期待したい。

 長崎県の国営諫早湾干拓事業をめぐり、潮受け堤防排水門を開門するかどうかで争われた裁判のことである。

 開門を命じたかつての確定判決を無効にするよう国が求めた訴訟の上告審判決があり、最高裁は、これを認めた福岡高裁判決を破棄して差し戻した。審理のやり直しだ。

 だが最高裁は同時に、開門の無効化があり得るとも示唆した。開門しない方向で、国や漁業者、営農者らが和解するよう促したのだろう。このメッセージこそ、重く受け止めなくてはならない。

 諫早湾事業は、一度始めれば止まらない巨大公共事業の典型である。そこで生じた問題の解決は本来、司法への丸投げではなく国が責任をもって果たすべきだ。

 問われるのはそのための政治判断である。地域の発展のためにもこれ以上、混乱を長引かせてはならない。安倍晋三政権がその覚悟と行動を示せるかが問われる。

 漁業者が漁獲量減少などを理由に開門を求め、営農者が塩害を心配して開門に反対する。この構図で争われた一連の訴訟が混乱を極めたのは、開門と非開門という正反対の司法判断が併存する「ねじれ状態」にあるからだ。

 ここまで問題がこじれた背景には、開門するかどうかで時の政権の判断が揺れたことがある。

 民主党政権時代の平成22年、当時の菅直人首相は地元との十分な相談がないまま、開門を命じた福岡高裁判決の上告を見送り、判決を確定させた。その後、別の訴訟で営農者らが求めた開門差し止めの仮処分が認められた。すると国は22年の判決を無効化するよう求めた。それが今回の訴訟だ。

 最高裁は今回、漁業者の開門請求権が失われたとして無効化を認めた2審の判断を否定した。その上で、22年の確定判決については暫定的な性格があるとし、情勢変化などを見据えて審理するよう求めた。今回と同じ最高裁第2小法廷は今年6月、別の2件の訴訟で非開門を確定させている。これらも踏まえ非開門での解決を促したとすれば現実的な判断である。

 今後、高裁で審理を尽くすべきはもちろんだ。根深い不信を解消するのは容易ではないが、漁業者と営農者の双方が納得できる合意形成を諦めてはならない。

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