【主張】豚コレラ拡大阻止 「ワクチン」に国は責任を

 農林水産省が豚コレラ対策でワクチンの接種を決めた。関東地方への拡大を受けた措置だ。

 再発生から1年がたつが、国による封じ込めは失敗続きだ。感染拡大が収束する気配はない。ワクチン接種は最後の手段といえる。

 ただ、ワクチン接種には利点と欠点がある。接種を決めた以上は、国が責任を持つのは当然である。地方自治体と緊密に連携しながら、事態収拾に全力を挙げねばならない。

 江藤拓農水相は20日の防疫対策本部の会合後に会見し、飼育豚へのワクチン接種実施を正式に表明した。大きな方針の転換である。国はワクチン接種に一貫して慎重姿勢を示してきた。

 今回ワクチン接種に踏み切るのは、豚コレラの感染が養豚の盛んな関東地方へ拡大したためだ。埼玉県秩父市の養豚場から山梨県笛吹市の流通センターに出荷された中から感染が確認された。

 新たに発生が確認された埼玉県とその隣県である群馬、千葉のほか、栃木、茨城の4県で、飼育頭数は本州全体の4割を超える。

 問題は、ワクチンを接種した後に生じる。抗体検査で接種豚とウイルス感染豚の区別が難しく、ともに出荷すれば、ワクチンを使っていない地域の養豚場を汚染する可能性があるからだ。農水省は豚コレラ発生県を中心に、限定的に実施する方向だ。その際、接種豚やその豚肉が地域から出ないよう流通制限を課す必要がある。

 だが、豚コレラが発生した地方自治体には、「全国流通ができないと養豚業は成り立たない」(大村秀章愛知県知事)との声も出ている。使用に当たっては、接種の利点と欠点を養豚農家はもとより地方自治体にも丁寧に説明し、合意を得る努力が欠かせない。

 接種しても感染豚と区別が可能なマーカーワクチンと呼ばれる新型ワクチンもある。これを使えば移動の制限は不要だが、使用実績がないなど効果に疑問が残り、現時点で即効性は期待できない。

 ワクチン接種の実施には、合意形成のほか、豚コレラに関する防疫指針の改定が必要で時間がかかる。その間にも豚コレラは感染拡大する可能性がある。養豚場のさらなる衛生管理強化も大事だ。

 接種豚肉を消費者が買い控えるなど、風評被害の防止も課題である。消費者への周知や啓発活動も欠かせない。

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