【外信コラム】自由か、安定か「民主主義は望まないの?」

 先日、ベルリンに駐在する中国企業の男性社員と食事する機会があった。欧州の勤務経験も長いようなので中国人に聞いてみたかった質問をしてみた。「民主主義は望まないの?」

 30年前の1989年、東独や東欧では民主化デモで共産党支配が倒れたが、民主化運動を弾圧した中国は体制を維持し、経済発展した。だが、監視は厳しく、自由に意見もいえない。

 男性は少々戸惑ったが、ポピュリズム(大衆迎合主義)勢力が伸長する欧州の問題にも触れ、「10億人以上の中国で民主主義は回らない。混乱する」と回答。子供を持つ親として「安定した暮らし」の方が大事だという。安定か、自由か。なかなか難しい問題だ。

 ポピュリズム政党が強い旧東独でも聞いた。商店の女性店主は雇用も保証された東独時代の方が生活は安定し、「自分で自由に決めるのは失敗もあって大変」と語る。それでも「言いたいこと、したいことを決められる自由の方がいい」という。

 チャーチル英元首相はかつて「民主主義は最悪の政治形態である。これまでに試みられたそれ以外の全ての政治形態を除けばだが」と語った。完璧でなく自己責任は大変かもしれない。権威主義的な政治も各地で目立つが、自由こそ新たな時代への社会の活力を生むと信じている。(宮下日出男「ベルリン物語」)

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