【主張】香港の弾圧激化 国際社会の監視を強めよ

 香港での逃亡犯条例改正案をめぐる政府と市民の対立が激化の一途をたどっている。状況の悪化を防ぎ、解決の糸口を探らなくてはならない。

 事態収拾に最大の責任を負うのは、香港特別行政区の林鄭月娥行政長官である。

 まず、改正案の即時撤回を言明すべきだ。事態の究明に当たる独立調査委員会の発足も必要だろう。

 いずれも林鄭氏の判断で実行できるはずだ。トップがこれほど無策では香港の高度自治は機能不全だと公言しているに等しい。

 他方で林鄭氏は通信や集会の自由を規制できる緊急状況規則条例の発動をちらつかせる。海外でも著名な学生リーダー、黄之鋒、周庭両氏の逮捕にも踏み切った。

 平和的な解決の扉を閉ざし、強硬策に頼るのであれば、市民の不信と怒りは倍加されよう。緊急状況規則条例の発動は避けなくてはならない。

 背後にいる中国政府は、隣接する広東省深セン市に武装警察部隊を集結させて越境派遣の構えを取る。香港駐留の中国軍の部隊交代も、わざわざ映像を公開した。

 中国の建国70年を迎える国慶節(10月1日)までに香港情勢の沈静化を狙う構えだろう。だが力の支配では、香港に真の安定は戻らない。

 中国は1997年の香港返還にあたり、「一国二制度」の維持を国際社会に公約した。逮捕された黄氏も、公約順守について「日本をはじめ国際社会も中国に要求してほしい」と訴えた。

 天安門事件の悲劇を香港で繰り返させないため、国際社会は結束して、一国二制度を無視した強硬解決を許さない決意を中国、香港の政府に伝える必要がある。

 さきの先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、香港返還の基本枠を定めた84年の中英共同宣言の再確認と香港での暴力回避を掲げた。中国政府はG7の意思表明に「無責任な口出し」と反発したが、今度は貿易摩擦の相手であるトランプ米大統領が「人道的な方法」を迫った。

 今月開かれる国連総会一般討論は中国に国際社会の監視の目を示す重要な機会となる。日本政府は率先して香港問題の平和解決を訴えてほしい。一方で一部の学生は過激な行動をやめるべきだ。暴力と破壊は弾圧の口実となり、国際社会の支持を失いかねない。

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