【主張】リクナビに勧告 個人情報は「商品」なのか

 大手就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の同意を得ずに「内定辞退率」の予測データを顧客企業に販売していた問題をめぐり、政府の個人情報保護委員会が是正勧告を出した。

 売り手市場の就職戦線では、企業の内定を得ても辞退する学生が多い。同社は自社サイトに登録した約8千人分の個人情報を人工知能(AI)で分析して、内定辞退の確率を、独自に算出していた。

 しかし、個人データを企業に提供する際に必要な手続きを行っていなかった。個人情報保護委が情報の取り扱いなどをめぐって改善を求めたのは当然だ。

 年間約80万人の学生が登録する同社サイトは、就活インフラとして幅広く利用されている。それだけに学生の信頼を裏切った責任は重大である。個人情報を商品としか見ていない企業体質の抜本的な改革が急務だ。

 個人情報保護法は、本人の同意なしに第三者に対して個人情報を提供することを禁じている。リクナビは利用規約に「採用活動補助のために利用企業に情報提供することがある」と記し、これで本人の同意を得たと主張していた。

 だが、個人情報保護委は「説明が明確ではない」と是正を勧告した。同委は「人生を左右しうる情報を扱いながら、適切な法令順守を行っていない」とも批判し、情報の取り扱い体制も見直しを求めた。同委の勧告は初めてで、深刻な事態と受け止めるべきだ。

 今回の内定辞退予測をめぐり、批判を受けた同社は販売を中止した。40社近くがこの予測を購入したものの、合否判定には直接使われなかったという。それでも知らない間に個人情報を勝手に売買された学生には、不信感が広がっているという。

 リクナビは、企業と就活生を結ぶ就職情報サイトで最大手の地位にある。その自覚を欠いた行動にはあきれるばかりだ。個人情報保護の重要性を社内で徹底し、厳格な再発防止策を講じなければ信頼回復など望めない。

 最近ではキャッシュレス決済が広がり、小売り現場でも個人情報を扱う場面が増えている。データ化が進む社会では、個人の嗜好(しこう)や行動が多角的に分析されている。そうした個人データが実際にどう使われているかを確認できるようにすることも課題だ。

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