【主張】豚コレラ感染拡大 ワクチン接種の検討急げ

 豚コレラの感染拡大が止まらない。昨年9月に岐阜県で発生して以降、愛知、三重、福井の各県で飼育豚の豚コレラ感染が確認され、富山、長野両県で野生イノシシの感染が見つかった。

 菅義偉官房長官は7日の記者会見で、豚コレラの感染地域の拡大について、「極めて重大な局面を迎えている」との認識を示した。まさに緊急事態である。

 農林水産省は現在、主な感染源であるイノシシ向けに餌ワクチンを撒(ま)いているが、感染拡大を防ぐ決め手とはなっていない。

 豚コレラ感染が見つかった県はもちろん、隣接する県も含め、養豚農家の不安は高まっている。地域を限定したワクチン接種を真剣に検討する段階を迎えたのではないか。

 農水省には、ワクチン接種を前提に、デメリットも含め関係者に丁寧に説明し、合意形成をしていく努力が求められる。

 防疫で最も重要なことは、主な感染源であるイノシシの豚コレラ撲滅である。だが、感染拡大は広範囲だ。農水省も駆除に乗り出しているが、撲滅するのは並大抵のことではない。そこで、飼育豚へのワクチン接種が、焦点とならざるを得なくなっている。

 接種で発症を食い止めれば、安心した養豚経営につながることが期待できる。地域限定で使用すれば、その他の地域は国際獣疫事務局(OIE)が認定する清浄地域でいられる可能性もある。

 ただし、ウイルスに感染した豚の発見が遅れるなどデメリットがあることも、政府がワクチン投与に慎重だった理由だ。ワクチンを接種すれば、抗体検査で接種豚とウイルス感染豚の区別が難しくなる。ウイルス感染した豚を接種豚とともに出荷すれば、ワクチンを使っていない地域の農場やイノシシを汚染する可能性もある。

 これを防ぐには、接種豚やその豚肉が地域から出ないよう移動や流通を制限する必要がある。

 全国一律に接種する方法もあるが、日本がOIEから清浄国を外され、接種時期の長期化で多額の費用もかかる。

 菅氏は飼育豚へのワクチン接種について「最終手段として慎重な検討が必要だ」と語った。豚コレラに対する養豚農家の危機感は強い。養豚農家の衛生管理には限度がある。国が責任を持って対策を講じねばならない。

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