【主張】かんぽ不適切販売 経営責任の重大さ自覚を

 日本郵政の長門正貢社長が記者会見し、傘下のかんぽ生命保険による不適切販売について、「郵便局への信頼を大きく損ねた。深くおわび申し上げる」と陳謝した。

 併せて、保険料を二重払いさせるなど顧客に不利益を強いた恐れのある案件が18万件を超えたと発表した。すでに判明していた件数の2倍である。

 順法精神のかけらもなく、企業統治も全く機能しなかった。組織の体をなしていない不正の蔓延(まんえん)である。これで顧客の財産を扱う企業の責務を果たせるのか。悪質極まる実態に驚くほかない。

 長門氏は自身の辞任を否定したが、経営責任が極めて重いことは論をまたない。地に落ちた信頼の回復は容易でないことを厳しく受け止めて、全容解明と再発防止に全力を尽くさねばならない。

 金融庁は、かんぽ生命への立ち入り検査を行い、業務改善命令を含む処分を検討する。ただちに動いて厳正に対処してほしい。

 かんぽ生命と、保険を販売する日本郵便は、約3千万件の全契約についても顧客の意向に沿っているかを確認し、9月末時点の調査状況を中間報告するという。

 中には顧客に無断で契約書類を偽造するといった法令違反もあったとされる。いずれにせよ顧客に対する重大な背信行為である。顧客の不利益を解消する対応にも万全を尽くさなければならない。

 背景にはノルマ達成を最優先にする過剰な営業姿勢があった。収益基盤の強化を急ぐあまり、顧客をないがしろにするのでは本末転倒である。今年度の営業目標は廃止するというが、営業態勢を抜本的に見直す作業が欠かせない。

 見過ごせないのは、日本郵政がかんぽ生命株を売却した4月時点で事案を把握していたのに公表しなかったことだ。当時は重大性を認識していなかったというが、株価に影響を及ぼし得る重要案件と知りながら開示が遅れたのなら投資家の信頼への裏切りである。詳細な検証が必要だろう。

 かんぽ生命と日本郵便だけでなく、ゆうちょ銀行も最近、別の不適切事案が見つかっている。民営化したといっても、グループへの国の関与は今も残る。その信用力を背景に商品を販売できることが経営の緩みの底流にあるのなら深刻だ。民営企業として当たり前の企業統治を確立できるかである。その根本が問われよう。

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