【主張】JOCの新体制 五輪の成功と信頼回復を

 日本オリンピック委員会(JOC)の新会長に全日本柔道連盟会長の山下泰裕氏が就任した。自国開催の2020年東京五輪を目前にしたトップ交代は、就任会見での山下氏の言葉を借りれば「非常事態」だ。恥ずべき事態でもある。

 形の上では、竹田恒和前会長は任期満了で退任した。竹田氏は五輪招致をめぐる不正疑惑で捜査対象となり、統括組織の長としても統率力を欠いていた。実情は、世間に「失格」の判を押された末の退場である。

 山下氏には「金メダル30個」を目標に掲げた東京五輪の成功に加え、スポーツ界の信頼回復に全力を挙げてもらいたい。

 18年に及んだ竹田体制の下、JOCは五輪招致の成功で財政面の潤いを得た。しかし、理事会も事務局上層部も人事がよどみ、規範意識の緩みは目に余る。競技団体で相次いだ不祥事に指導的な役割を果たせず、もはや統括組織としての体をなしていない。

 新執行部は外部の人材、それも文部科学省出身者を受け入れた。スポーツ界の力だけでは組織改革ができないと、山下氏が見切りをつけたからだ。つまり人材が底を払った現実を物語る。

 スポーツが国の干渉を受ける状況は好ましくない。だが、当初予算で100億円超の選手強化費を国に依存する以上、組織の再建を伴わなければ国民の理解は得られない。官僚経験者に急場を委ねるのはやむを得まい。

 山下氏は会見で「第一優先は2020東京五輪の成功」と繰り返し、組織改革への意欲は控えめに語った。急激な変化を求めて反発を買うより、スポーツ界を一つに束ねて東京五輪に向かうべきだという、現実的な判断が働いたからだろう。改革が後回しになるわけではないことを、各競技団体は肝に銘じるべきだ。

 JOCは厳しい時代を迎えている。東京五輪が終われば、国や民間の支援は確実にやせ細る。大会組織委員会の森喜朗会長は、山下氏が新会長に就任したその日に、JOCと日本スポーツ協会の再統合を促す発言をした。JOCが軽視されている証拠だ。

 山下氏は「社会に不可欠な存在として、その意義を高めたい」と危機感をにじませる。大事なのは「五輪」ではなく「五輪後」への備えだ。難局でかじを取る覚悟を改めて山下氏に求めたい。

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